今回ワタクシ水野は、さまざまな雑用と3Dプリンタ係を担当しながら、皆さんのモデリングを拝見していました。その中で印象が強かったのは、どの子も臆せずにCADをどんどん操作していることでした。
CAD初心者の大人の場合、中には、まるでお地蔵さまのように固まってしまう人もいるのです。一方、子どもたちは、そんなことは全くありませんでした。
親御さんたちも、何げに積極的です。やり方が分からなければ、すぐに手が挙がり、教えてもらったら即応用します。非常にテンポがよいのです。しかも、「自分がこだわる形状にするために時間を割く」という、何とも素晴らしい状況。始まる前には、「たった3時間しかないのに、お題が5つもあって、消化できるのかな」と思っていたのですが、それは全くの杞憂でした。
もちろん、お題1〜5に進む間では、少しずつですが、新しいことを学びました。最初の2つのお題では、基本的には石井さんが用意した形状をいじるだけでしたが、3つ目のお題、ペットボトルのキャップにはめられる王冠では、早くもスケッチが登場しました。
お題の王冠の頂点にある星は、スケッチから押し出したものです。どの子も「スケッチなるものをやると、もっと自分の欲しい形状を作ることができるんだなぁ」ということを早くも理解し始めました。
ほとんどの子は小学校3〜4年生以上だったので、自分でCADを操作してモデリングしていました。さすがに小学校1年生の男の子の場合、CADの操作は自分でできませんでしたが、3Dプリンタには興味津々。デモで動かしていた「Replicator2」の前から離れず、モデリングはお父さんが一生懸命やっていました。
男の子が、本当に作りたかったのは、大好きな恐竜でした。しかしどうも、「作るのが難しそう」と分かると、今度は「マンモス!」と言い出しました。正確に言うと、“牙のようなもの”にご執心のご様子でした。なんと、お題4のクマに「マンモスの牙を付けたい!」とまで言い出しました。
さすがにお父さんが、「マンモスの牙は勘弁してくれ〜」というと、石井さんが、さり気なく「作り方を教えましょうか?」の一言。結局は、3Dプリンタでの造形を考えて、ストレートな牙になりましたが、この男の子の「牙へのこだわり」は大したものでしたよ。細かなディレクションをお父さんに与え続けていました。「大きくなったら厳しいプロデューサーになるのかなぁ」などと、そこにいた皆で勝手な感想を述べたりしました。
この子は「作りたいもの」がとてもはっきりしていました。こういう子がモデリングできるようになれば、CADや3Dプリンタが大きな威力を発揮するのではないかという期待感も。やはり、「これを作りたい!」というモチベーションが一番大事だと思うのです。
ちなみに造形中の「牙クマ」がこちらです。
最後のお題は、自分の部屋などのドアに掛けるプレートです。このお題では、石井さんは真っ白なプレートのみを提示して、その上に好きな文字で思い思いにアルファベットや漢字で自分の名前を浮き出させたりしました。
こちらからは特に教えてもいないのに、いったん、文字大のブロックを配置してから、文字は、教えたのと逆に「ブロックの中に掘り込む」という技を使う子までいました。
ここで、石井さんはさらなる技を子どもたちに伝授しました。既にモデリングしたクマやアイスクリームを取り込んで縮小し、板の上に配置していきました。これで子どもたちは、一度作った3次元形状は、他の目的でも再利用できるということを学びました。
最後に、子どもたちに「これは一押し!」という形状を1つだけ、出力するモデルを選んでもらいました。
以下が、今回参加した子どもたちによる作品です。中には、とても初めてとは思えないほど大改造されているものまでありました。
人気だったのは、自分の部屋のドアに掛けるプレートと自分流クマのようでした。ところで、写真中央にある王冠に注目してください。丸い側面に沿って文字を彫っています。細かいことは考えず、教わったプレートの文字加工を即座に応用したようです。すごいですね。
今のワタクシは、出力された作品たちを、子どもたちの元に無事届け終えて、ほっとしているところです。夏休みの課題なので、遅れたらシャレになりません。
今回学んだうちの1人でも2人でも、これからも3次元モデリングを続けてくれるとうれしいですね。
後日談で伝え聞いた話ですが、あるお父さんによれば娘さんが家に帰ってからもいろいろとモデリングをしているとか。しかも、「絵を描くよりもモデリングした方が早い」とのたまっているとかいないとか……。いやはや、時代は変わり始めています。
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