今回筆者が訪問したFABLAB鎌倉は、3Dプリンタやレーザーカッターなど工作機械が用意された一般人向け工房だ。
皆さま、お暑うございます。梅雨入りも早かったですが、梅雨明けも早いですね。本格的に暑い季節に突入しました。電力不足やら何やら不安なこともありますが、夏らしいこの季節は、やっぱりいいですね。ガリガリくんを食べながら、スーパークールビズで仕事をするのも悪くありません。そうそう、アイスキャンディ類も、金型で作りますね。
さて、とある方と金型の話をしていたときに、こんな話題が出てきました。アメリカの家庭では型に液体を入れて、棒をそこへツッコミ、アイスキャンディを作ります。つまり幼少のころから型でモノを作る体験があるのです。アイスキャンディの型って、ちゃんと抜き勾配もあるので、ちゃんと引き抜けます。そんなことを考えながら、ガリガリ君を見てみたら、やはりちゃんと抜き勾配がありますね。話が脱線しましたが……、そんなふうに、幼少の頃から何かモノを作る体験って、非常に大事なのでは、と思う今日この頃なのです。
日頃、私が思っていることなのですが、いまのモノづくりにおける問題のうち、1つはモノを使う人と、モノを作る人が完全に分かれてしまっているということ。いまの子どもにとって、モノは買うものであって、自分で作るものだという意識がないことも多いのではないでしょうか。でも本来は、素人の自分が作る延長線上にモノづくりがあったはず。“自分が欲しいものを自分で作る”体験ができることが、いま大事なのではないでしょうか。
そんなことを考えているので、私も日々、趣味な3次元モデリングやら、RPやらで、少々高い自分の遊び道具を出力しているわけなのです。でも、私はたまたま環境に恵まれているだけです。そんな環境はまだまだ周囲には少ないのが実情ですね。
……何てことを考えていた、そんな数カ月前のある日のことです。とある友人と仕事の話をしていたとき、急に「ねえ、FABLAB(ファブラブ)って知っている?」と投げかけられたのです。
「FABLAB」とは、一般の人に開かれた工房で、3Dプリンタやレーザーカッターなど工作機械が用意されています。マサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド教授が『ものづくり革命 パーソナルファブリケーションの夜明け』で実例を紹介してから、世界各地に広がってきています。言ってみれば、“新しいモノづくりの形を開拓していく”実験工房なのです。
実は、私の1冊目の著書『絵ときでわかる3次元CADの本』をアマゾンで検索すると、「この本を買っている人は、こちらも買っています」ということで、なぜか『ものづくり革命』が表示されるという栄誉に浴しました。なので取りあえず、その存在を知っていたという状態でした。
そして、その日本第1号のFABLABが、2011年6月に鎌倉にできるとの話。その代表の方は、その話を振ってくれた人の友人だということでした。すぐにでも行きたかったのですが、お互いの都合がつかず……、やっといけたのが7月に入ってからでした。
とはいえ、すっかり真夏の鎌倉の日曜日。いっそこのまま、海のほうにでも行ってしまおうか? もとい、仕事でもこんな仕事なら、楽しい! ――FABLAB鎌倉は、鎌倉駅から歩いて5分くらいという、とても交通の便がよい場所ながら、雰囲気もよい場所にあります。
秋田の古い蔵を移築した建物の一室が、FABLAB鎌倉です。既にそこが手狭になり、現在、スペースを拡張中です。建物の中は3つの部屋に仕切られていて、FABLAB鎌倉もその1室に入っていましたが、さらに1室が空いたということなのです。
写真で見た通り、とても雰囲気のある建物なので、人力車のツアーでは必ず停車するとのことです。時々、普通の店と間違えて入ってくる方もいるとか。
FABLAB鎌倉の代表で慶応大学准教授の田中浩也さんに出迎えてもらい、ちょっと火照った体をクールダウンしたところで、早速、紹介をしていただきました。
で、FABLABって一体何? ということですが。まずは施設からということで、2階にある工房から。
ちょっと年期の入った木製の、急な階段を昇っていきます。古民家の雰囲気、ばっちりです。昇り終えたところにあったのが、レーザーカッターでした。田中さんいわく、「FABLAB鎌倉に置いてある最も高い機械の1つ」。
毎週土曜日の一般公開日には、このレーザーカッターが最も人気のある機械のようです。これで自家製の看板を作って帰る人がとても多いと言います。これは、とても素晴らしいことだと思います。商売をやっていれば、看板にもこだわりを持ちたいということは絶対にあるでしょう。そんなときに、本当にオリジナルの物を人に頼むとコストも掛かるし、それだけでなく、何よりも自分の意図がなかなか伝わらない。「出来はともかく、自分で作りたい」と言う人は少なからずいるだろうと私も思っていたのですが、毎週土曜日の盛況ぶりを聞く限りでは、やっぱりその通りなのでしょう。
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