旭化成は、長年培ってきた樹脂の知見とCAE技術のノウハウを生かし、「CAEサービス」を立ち上げ、PoCを通じた展開を進めている。中でも、軽量化に効果を発揮するトポロジー最適化の活用に注力しており、これまで接点のなかった顧客層も含めて、設計支援の取り組みを外部にまで広げていく方針だ。
旭化成は、自社の高機能樹脂の販売活動の一環として、CAE技術を活用した用途提案などを展開しており、自動車産業をはじめとする多くの製品開発の現場を支援している。そして、現在、こうした活動で培われた知見やノウハウを「CAEサービス」として体系化し、PoC(概念実証)を通じて新たなビジネスを展開しようとしている。
中でも注力しているのが、設計の自由度を飛躍的に高める「トポロジー最適化」による樹脂部品設計である。旭化成は、長年にわたり蓄積してきた樹脂に関する知見とCAEの技術力を融合させ、他社にはない独自の設計支援を強みとしている。
本稿では、旭化成 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部のメンバーに対し、同社が手掛けるCAEサービスの全体像と、特に注力するトポロジー最適化の取り組みなどについて話を聞いた。
旭化成グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で事業を展開しており、CAE技術開発部はこのうちマテリアル領域における研究開発と事業開発を担っている。
CAE技術開発部の主な業務は、マテリアル領域の中でも特にケミカル事業との関わりが深く、同社の高機能樹脂の販売支援を目的に、CAE技術を活用した用途提案を行っている。「単に樹脂を販売するのではなく、樹脂の知識とCAEの技術力を生かし、顧客の設計課題の解決や適切な樹脂の活用方法にまで踏み込んだ提案を行えるのが、われわれの強みだ」と、同社 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 部長の工藤正和氏は語る。
こうした活動の中で蓄積されてきたCAEのノウハウを、旭化成以外の樹脂や素材を活用した設計にも展開可能にしたのがCAEサービスだ。特に、樹脂メーカーとしての強みを生かした“樹脂に特化した解析”を得意としており、樹脂の知見とCAE技術のノウハウを掛け合わせることで、顧客ニーズに応じた解析およびソリューション提案へとつなげられる点が特長である。
「これまでは、当社の樹脂の販売を支援するためにCAE技術を提供してきた。しかし今後は、旭化成の樹脂に限定することなく、他社製の樹脂や素材に対しても、受託解析という形でCAEサービスを展開していく。旭化成が長年培ってきたCAE技術や解析ノウハウを、より多くの設計現場で活用してもらうことを狙いとしている」と、同社 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの高村兼司氏は述べる。
同社のCAEサービスでは、トポロジー最適化、樹脂流動解析、弾塑性解析、衝撃解析、振動解析、熱流体解析といった各種解析技術を活用した設計業務を支援する。
例えば、樹脂流動解析では、射出成形時における樹脂の流動挙動や、成形後に発生する反り/変形を事前に予測することが可能である。さらに、ガラス繊維入り樹脂のような繊維強化材料に対しては、繊維の配向を精密にシミュレーションし、それを基に異方性を考慮した構造解析や強度解析へとつなげることもできる。
そして、このCAEサービスの中で、現在注力しているのが「トポロジー最適化を活用した樹脂部品の設計」である。
「『トポロジー最適化を活用して部品を軽量化したい』という要望は、これまでも多くの顧客から寄せられていた。そこで今回、将来的に正式なサービスとして提供できる可能性を見据え、トポロジー最適化を活用した樹脂部品の設計にフォーカスを当てた」(工藤氏)
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