樹脂と解析の知見を外へ あらゆる設計課題に寄り添う旭化成のCAEサービスとはCAE最前線(4/4 ページ)

» 2025年06月20日 06時00分 公開
[八木沢篤MONOist]
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エンプラ総合情報サイトでCAEサービスを広く発信

 旭化成では、トポロジー最適化を活用した樹脂部品の設計に関する取り組みについて、より多くの人に理解を深めてもらうことを目的に、無料ウェビナーの開催なども企画している(2025年6月24日には高村氏が講師を務めるウェビナーが開催される)。

 また、エンジニアリングプラスチック(以下、エンプラ)製品に関する情報を集約した「エンプラ総合情報サイト」も展開しており、同社が取り扱う主力エンプラ製品であるPA樹脂「レオナ(LEONA)」、変性PPE樹脂「ザイロン(XYRON)」、ポリアセタール(POM)樹脂「テナック(TENAC)」の紹介や活用提案などを発信している。

旭化成 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの野本紫織氏 旭化成 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの野本紫織氏

 同サイトでは、CAE技術に関する情報も体系的にまとまっており、CAEサービスの紹介や活用事例、基礎知識を学べる解説コンテンツの他、Webブラウザ上で利用可能な簡易シミュレーション機能も提供している。例えば、梁(はり)のたわみ計算や積層板の曲げ剛性などを、簡単な条件入力によって確認できる仕様となっている。

 「もともとCAE技術は、当社のエンプラ製品の顧客向けに提供してきたという経緯がある。そのため、まずは既存顧客に対して、旭化成のCAE技術の有用性をあらためて認識してもらいたいという思いから、Webサイトでの訴求を強化している。さらに、デジタルマーケティングの手法をフルに活用しながら、CAEサービスを広く知ってもらい、これまで接点のなかった設計者や新たな顧客層とのつながりの創出を目指したい」と、同社 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの野本紫織氏は語る。

エンプラ総合情報サイトの中に、CAEサービスに関する各種情報や基礎知識を学べる解説コンテンツなどが掲載されている エンプラ総合情報サイトの中に、CAEサービスに関する各種情報や基礎知識を学べる解説コンテンツなどが掲載されている[クリックで拡大] 出所:旭化成

CAEサービスのこれからに向けて

 旭化成では、エンプラ総合情報サイトなどを通じて、CAEサービスに関する問い合わせが寄せられており、既に受託解析のテストセールスが始まっているという。

旭化成 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの山口定彦氏 旭化成 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの山口定彦氏

 この状況について、同社 マテリアル新事業開発センター サステナブルポリマー研究所 CAE技術開発部 CAEグループの山口定彦氏は、次のように説明する。

 「メインのエンプラ事業は、自動車用途が中心でティア1やOEMが主な顧客だが、CAEサービスについては、さまざまな業界から、時には意外な分野からも引き合いが来ている。特に、非自動車分野からの相談が多い印象だ。ただし、トポロジー最適化に関する具体的な相談は、現状まだ少ない。今後は、樹脂販売(エンプラ事業)に付随するサービスという位置付けではなく、独立したCAEサービスの中で、トポロジー最適化による設計支援の実績を着実に積み上げていきたい」(山口氏)

 同社のCAEサービスは現在、PoCの段階にあり、正式なサービスとしての展開は今後の予定である。「2027年度までにはサービスを本格的にスタートさせ、まずは年間1億円の売上高を最初のマイルストーンとして目指したい」と工藤氏は意気込みを語る。

CAEサービスの流れについて CAEサービスの流れについて[クリックで拡大] 出所:旭化成

この記事のポイント

Q: 旭化成のCAEサービスとは何か?

A: 旭化成は、長年培ってきた樹脂の知見とCAE技術を組み合わせ、樹脂に特化した設計解析支援を「CAEサービス」として外部提供を始めた。現在はPoC(概念実証)段階で、将来の正式サービス展開を目指している。

Q: トポロジー最適化に注力する理由は?

A: 設計要件の高度化と環境負荷低減ニーズの高まりが背景にある。トポロジー最適化により、構造的に効率的で、軽量かつ強度を保った設計を可能にし、材料使用料の削減やCO2排出量の削減にも貢献できる。

Q: トポロジー最適化の課題と旭化成の強みは?

A: トポロジー最適化の活用が設計現場で進まない理由として、「環境構築」「運用ノウハウ」「製造可能な形状への変換」の3つのハードルが挙げられる。旭化成はこれら全てに対し、解析/材料/成形の知見を融合して一気通貫で支援できる点を強みとしている。

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