アンシス・ジャパンは「未来のモビリティ開発を加速させるAnsysのAI対応シミュレーションと革新的なデジタルツイン構築に向けた取り組み」と題し、記者説明会を開催した。
アンシス・ジャパンは2025年5月21日、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(会期:2025年5月21〜23日/会場:パシフィコ横浜)の開催に合わせ、「未来のモビリティ開発を加速させるAnsysのAI(人工知能)対応シミュレーションと革新的なデジタルツイン構築に向けた取り組み」と題し、記者説明会を行った。
説明会では、自動車分野におけるAnsysの戦略やシミュレーション活用の重要性、パートナーであるNVIDIAとの提携によるデジタルツインの進化などについて、米Ansys Global Field CTO Hi-Tech and Regional CTO APACのJeyaraj Nair(ジェイラージ・ナイル)氏が解説した。
冒頭、ナイル氏は自動車業界の現状について、「自動車業界は典型的なハイテク産業となっており、あらゆる産業が高度化する中、それらの先を行く技術革新の最前線にある」と言及。中でも注目すべきは、「SDV(Software Defined Vehicle)」の動向であり、「“車輪の上に載ったコンピュータ”と称されるその中核には、高度な半導体技術が不可欠である」(ナイル氏)と述べる。
Ansysは、近年の約50億米ドルに上る企業買収を通じて、シミュレーション技術のポートフォリオを強化してきた。2024年度には売上高が25億米ドルを突破し、世界350社以上との戦略的パートナーシップを、また3000以上の大学との連携を構築するなど、産学を横断した展開を進めている。
自動車業界においては、世界の主要OEMの95%、サプライヤーの94%がAnsysの製品を導入しており、「設計初期から製品検証に至るまで、製品開発ライフサイクル全体をAnsysが支えている」(ナイル氏)という。
Ansysのビジネスを支える技術的中核は「物理ベースのシミュレーション」にある。同社は、高精度な数値解析を可能にする独自ソルバーを開発し、これをHPC(高性能コンピューティング)やGPUアクセラレーションと組み合わせることで、開発の高速化と高信頼性の両立を図っている。
さらに、ナイル氏は「産業界は『デジタルエンジニアリング』への大きな転換期を迎えており、Ansysもここに注力している」と強調する。デジタルエンジニアリングとは、紙ベースの設計から脱却し、要件定義やシステムアーキテクチャ、モデルベースのシミュレーションを含め、製品開発の全プロセスをデジタル上で実行する手法である。
また近年では、開発体制のグローバル化と分散化が進んでおり、特定の時期などに応じて一時的にコンピューティングリソースの増強が求められるケースも増えている。こうした背景を受け、「Ansysはクラウドインフラストラクチャについても力を入れている」(ナイル氏)という。
AI技術の進展も、こうした変革を加速させる要素の一つである。Ansysは、ユーザーのデータを学習するAIベースのROM(Reduced Order Model)により、迅速な設計および最適化を実現している。また、生成AIによる自然言語インタフェース「AnsysGPT」などを通じ、設計初期の検討を加速し、技術者の創造的活動を支援する環境を提供している。
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