データムの配置位置の仕方には、さまざまなルールがあるので要注意。あなたの作成した過去図面は大丈夫?
前回までに、加工と計測について基礎的な知識を確認しました。今回より、具体的な幾何公差のモジュールについて順を追って解説していきます。
「データム」とは、「形体の姿勢偏差、位置偏差、振れなどを決めるために設定した理論的に正確な幾何学的基準」と定義します。つまり、加工や寸法測定をする際に「この面または線を基準に加工・測定しなさい」という基準を表します。
「設計」「加工」「計測」の共通の情報が「図面」です。この3者についての作業性および機能を考慮した共通基準として満足できる部分をデータムとして設定することが理想的です。そして、図面の中でデータムは基準を表すための記号として用いられます。
基準とすべき面(あるいは線や点)に対して、図面上で下記のデータム記号を付けます。データム記号を表す三角記号には白抜きと黒塗りの2種類がありますが、どちらを使っても構いません。
データム記号の向きにかかわらず、アルファベットは必ず図面の見る向きに合わせます。これは切断線や矢示法にも共通していえることで、製図の作法上、寸法線と併記して表すはめあい公差記号や、ねじの種類やその等級を表すアルファベットなどを除いて、図面の理解を深めるために記号として用いるアルファベットは必ず図面の見る向きに合わせます。
データムを指示した面といえども決して完全な形状をしているわけではありません。図面にデータムを指示した場合、その面を定盤などに押し当て、それを基準に測定することを意味します。つまり、より精密な形状を持つ定盤などと接することで安定させ、その定盤などを基準に置き換えて計測を行うのです。この定盤など代替基準となるものを実用データムと呼びます。
図面上でのデータムの配置位置により指示領域(データムが意味するもの)が異なるため注意が必要です。自社にある過去の図面を探してみてください。結構いいかげんにデータムを記入しているものがたくさんあると思います。
厳密に設計意図を表すためには、データムを指示する位置に注意しなければいけないことを理解してください。
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