計測に当たり、部品を完全拘束するには、一般的に3つのデータムを用いて姿勢を拘束します。このように、互いに直交する3つのデータム平面によって構成されるデータム系を「三平面データム系」と呼びます(図11)。
データム形体として平面を指示する場合、面積が大きければ大きいほど、表面はうねり、理想的な形状と大きく異なります。この場合、表面全体をデータム形体として指示すると、加工や検査のときに大きな誤差を生じる可能性があり、繰り返し性や再現性が悪くなり計測の不確かさにつながります。また、凹面の底部をデータム面とする場合は直接定盤にデータム面を当てることができない場合もあります。
そこで、これらを防止するために「データムターゲット」を指示し、必要最小限の部分をデータムと設定するものです。
データムターゲットは、横線で2つに区切った円形の枠(「データムターゲット枠」)によって図示します。データムターゲット記入枠の下段には、形体全体のデータムと同じデータムを指示する文字記号およびデータムターゲットの番号を表す数字を記入します(図12、13)。
ここまで、データムの使い方を説明してきましたが、JISハンドブックや一般の製図書では、データム面は基準面であるのに対して、その面に平面度や円筒度、真直度などを記入した事例はほとんどありませんでした。
また第二次データムや第三次データムなど優先順位の低いデータムにも、第一次データムとの関係を表す平行度や直角度、位置度などを指示する事例も皆無に等しい状態でした。
これは、データム面だから、それなりの形状精度が必要という暗黙の了解で指示を省略しているためです。
しかし、このような考えは、“曖昧性を排除する”という目的に反することになるので、「データム+幾何公差」は必然であるといえます。
JISには、「相互に関連したデータム形体および実用データムの形体の精度は機能上の要求に対して十分でなければならない。そのためデータム形体には、形状公差を指定することが望ましい」と記載されています。つまりデータムは、基準となる面あるいは線ですから、精度が必要なのです(図14)。
幾何特性は、「形状」「姿勢」「位置」「振れ」の4つの公差に分類されます。まずは、幾何特性の全体像を把握しましょう。さらに、これら4つの幾何特性に共通する指示に関する作法を知ることが必要です。今回学習したデータムを必ずしも使うとは限らないのです。次回より、幾何特性が定義できる領域を知り、図面指示上の作法を学習していきましょう。(次回に続く)
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