「データム(Datum)」とは? 今回は、設計者であれば当たり前のように聞くこの用語について掘り下げていきます。
前回、「データム(Datum)」という用語が登場しました。そこで今回は、設計者であれば当たり前のように聞くこの用語について掘り下げていきます。
まずは、JIS規格(日本工業規格)からその定義について調べてみることにします。
JIS規格の記載内容から次のような部品を描いてみました(図1)。
これは測定の場面でよく見られる、定盤の上に矩形(直方体)形状の部品が置かれている状態です。通常、定盤には鉄あるいは花崗岩などが使用され、石材のものを「石定盤」といいます。定盤は測定の際に測定物を置く基準となり、その「平面度」は測定そのものに影響を及ぼします。そのため、JIS規格では平面度の許容差を「0級」「1級」「2級」の3等級に区分しています(JISB7513:1992 精密定盤)。
この規格では「使用面の呼び寸法」に対し、各等級における「平面度の公差値」が定められています。例えば、使用面の呼び寸法が1000×1000mmの場合は、平面度の公差値が「0級:7μm」「1級:14μm」「2級:28μm」と規定されています。
測定の基準として用いられる定盤であっても、その表面の平面度は「0μm」ではありません。定盤の上に置かれた側の加工物の平面も前回説明したように、ある平面度/平行度の状態(設計者が設定した幾何公差値の範囲)にあります。では、この両方の接触面を拡大してみましょう(図2)。
このように、JIS規格で記されている「関連形体に幾何公差を指示するときに、公差域を規制するために設定した理論的な幾何学基準」のことが、図2のデータムとなります。
このデータムの例では、定盤の接触面のような精密な形状を持つ表面が、「実用データム形体」となり、これによりデータムが設定されます。「データム形体」は、図2の表面のように対称物の実際の形体を指します。
以上、測定に関して、データムとなる平面の説明をしました。
整理してみると、データムは、
を表していると考えると理解しやすいでしょう。
では、加工や測定の対象部品は誰が考えるのでしょうか? これは言うまでもなく設計者です。加工や測定の基準(データム)は、部品加工を行う人や測定を行う人が決めるものではありません。2次元、3次元問わず、“設計の意図”として設計者が決め、「図面」としてそれを表現します。こうして作製された図面が設計、加工、測定において“共通の情報源”として使用されるわけです。
産業機械の分野では、矩形形状の部品や円柱形状の部品が使用される場合がほとんどです。3D CADでこれらの部品をモデリングする際、設計者は「基準」を意識するはずです。この基準には部品の接合面と同様に、“何かしらの意味”を持っています。その上で、3D CADでモデルを描く場合、空間上の何の意味もない場所に3Dモデルを置くことはなく、次のような位置にモデルを描きます(図3、図4)。
「iCAD SX」のようにアセンブリからパーツの“切り出し”を行い、外部パーツとして部品図を作成する場合も、「SOLIDWORKS」のようにパーツモデルを描いてからアセンブリを“構築する”場合も、そのアセンブリ自身に意味のある基準が存在するはずです。このように設計者は“いつも”設計意図として「何らかの基準」を持っているはずなのです。
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