社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第12回のテーマは「量産開始後のODMメーカーとの関係」についてだ。
「ODM」とは、設計と製造(量産)を委託することを指すが、依頼主(スタートアップ)とODMメーカーとの関係は量産開始後も、その製品の生産が終了するまで続く。
そこで、今回と次回の2回にわたって、量産直前から生産が終了するまでに必要となる、ODMメーカーとの関わりについて解説する。
ODMを依頼するスタートアップは、量産が開始されれば、「あとはODMメーカーから定期的に製品を購入し、販売するだけでよい」と考えがちである。
しかし、実際には、製品の販売後はユーザーと関わる“メーカー”としての仕事があり、その一部には製品を設計したODMメーカーに委託しなければならない内容も含まれる。もちろん、そこには委託費用が発生する。ODMを依頼するスタートアップはこのことを忘れてはならない。
以下に示す内容は、基本的にはODMメーカーのやり方に従うのがよい。
製品仕様書に、製品の全ての仕様が記載されているわけではない。例えば、外装部品の目に見える色やその嵌合(かんごう)状態、梱包(こんぽう)後の部品配置などの詳細は明記されていない。
当然ながら、量産される製品によって、仕様の許容できない極端なバラツキがあってはならない。そのため、量産開始前にODMメーカーから購入する最終製品のサンプルを作製するのだ。
その際、最低2台のサンプルを作製し、スタートアップとODMメーカーの双方で承認製品として共有する。もし、ODMメーカーが量産を外注(外部のメーカーに量産を委託)している場合には、3台のサンプルを作製して3社で共有するとよい(図1)。
承認製品は、最終の試作で作製する。ODMメーカーにとっては「今後、この承認製品と同じものを量産する」こと、スタートアップにとっては「今後、この承認製品と同じものを購入する」ことを意味する。
ODMメーカーが量産を開始し、実際に製品が納入されると、スタートアップは製品の受け入れ検査を行う。この受け入れ検査において疑義が生じた場合は、承認製品と照らし合わせ、製品が事前の約束(取り決め)通りに仕上がっているかを確認する。
もし承認製品との違いが見つかった場合は、次のいずれかの対応を行う。
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