絶対に押さえておきたい「機械材料」の基礎知識若手エンジニアのための機械設計入門(10)(1/2 ページ)

3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第10回は、若手エンジニアの皆さんにぜひ理解しておいてほしい「機械材料」の基本を取り上げる。

» 2025年11月04日 07時00分 公開

 連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めて間もないエンジニアの皆さんを対象に、設計業務で押さえておくべき基礎知識や考え方などを分かりやすく解説していきます。

 モノづくりの現場では、「この部品、SS400で作っておいて」といったやりとりが日常的に交わされています。しかし、設計の経験が浅いエンジニアの中には「SS400って何?」「SUS304との違いは?」と疑問に思う人も少なくありません。材料の特性を正しく理解しておくことは、設計はもちろん、強度設計やCAE解析を行う上でも欠かせない知識です。

 そこで今回は、若手エンジニアの皆さんにぜひ理解しておいてほしい「機械材料」の基本について、実務に直結する視点から分かりやすく解説していきます。

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1.機械材料とは

 私たちが日常的に使っているあらゆる機械(機器)は、数多くの材料から構成されています。そうした材料を総称して、機械材料と呼びます。

 一口に機械材料といっても、その種類は実に多岐にわたります。設計者にとって「どの材料を選ぶか」は、製品の性能や寿命、コストを大きく左右する重要な判断です。

 機械材料は、次の3つに分類できます。

  • 機械材料
    • 金属材料
    • 非金属材料
    • 複合材料
機械材料 図1 機械材料[クリックで拡大]

 このうち、現場で最も広く使われているのが「金属材料」です。金属は、強度や加工性、電気伝導性、熱伝導性に優れており、機械構造物の骨格を支える主要な素材となっています。

 「非金属材料」は、軽量化や絶縁性、耐摩耗性などの特性を生かす目的で用いられます。代表的なものとして、樹脂(プラスチック)、セラミックス、ゴム、複合材料が挙げられます。

 「複合材料」は、複数の材料を組み合わせて個々の長所を高めた素材です。「軽くて強い」という特性を両立できる夢の材料として注目されています。

2.金属材料とは

 金属材料は、さらに次の2種類に分類できます。

  • 金属材料
    • 鉄鋼材料
    • 非鉄金属材料
金属材料 図2 金属材料[クリックで拡大]

 「鉄鋼材料」とは、いわゆる鉄を主成分とする金属です。代表的なものに鋼と鋳鉄があり、機械のフレームや軸、ボルト、ギア、ベアリングなど、幅広い構造部品に使用されています。

 一方の「非鉄金属材料」には、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウムなどが含まれます。これらは軽量化や耐食性が求められる用途で使用され、例えば航空機の機体や自動車のホイール、電子機器の筐体などが典型的です。

2-1.鉄鋼材料の特徴

 鉄鋼材料が機械材料の中心として広く使われている理由は、「強度」と「靭性(ねばり強さ)」のバランスに優れている点にあります。さらに、熱処理や合金化によって性質を大きく変えることができ、目的に応じた材料設計が可能です。

 例えば、鋼に炭素を加えたり、クロムやニッケルを添加してステンレス鋼にしたりすることで、強度や耐食性、加工性を自在に調整できます。こうした柔軟性の高さから、金属材料の中では鉄系材料が最も多用されているといえます。

2-2.非鉄金属材料の特徴

 一方の非鉄金属材料の魅力は、何といっても「軽さ」です。アルミニウムは鉄の約3分の1という低い比重であり、軽量化を実現する上で欠かせない材料です。

質量密度
 ・アルミニウム:約2.70g/cm3
 ・SS400:約7.85g/cm3

 また、銅は優れた電気伝導性を持ち、電線やモーターコイルなどに広く利用されています。

電気伝導率
 ・銅:約59.6×106S/m
 ・鉄:約10.0×106S/m

 さらに、チタンは軽量でありながら耐食性にも優れており、医療機器や航空宇宙向け部品などに採用されています。

 このように、非鉄金属材料は“鉄鋼材料では実現しにくい特性”を補完する存在であり、用途に応じた材料選定の幅を広げてくれます。

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