トヨタシステムズは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」に出展し、3D形状を認識して製品性能をAIで素早く予測するシステム「3D-OWL」を訴求していた。
トヨタシステムズは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(会期:2025年5月21〜23日/会場:パシフィコ横浜)に出展し、3D形状を認識して製品性能をAI(人工知能)で素早く予測するシステム「3D-OWL(3D Operation with Learning)」を訴求していた。
3D-OWLは、製品の設計/開発において、形状に基づく性能評価を短時間で実施するために開発された、機械学習によるサロゲートモデル(CAE代理モデル)だ。トヨタ自動車、トヨタシステムズ、東京大学の3者による共同研究から生まれたシステムで、現在は3D-OWLとしてトヨタシステムズが開発/販売を手掛けている。
3D-OWLを用いた学習フェーズでは、始めに3D形状(メッシュ形状)、性能値(数値)、解析結果の分布図(評価画像)を用意する。3D形状は3D-OWLの内部で「Depth Map(距離画像)」と呼ばれる3D形状認識エンジンによって2D画像に変換され、その特徴量が性能値と分布図とともに機械学習の入力として利用され、サロゲートモデルが構築されていく。機械学習エンジンは、東京大学が特許を保有するDepth Map処理に特化した形で拡張された「ガウス過程モデル」が用いられている。
新たな予測を行う際には、構築したサロゲートモデルに設計段階の3D形状を与えることで、実際の解析結果に極めて近い予測値を即座に取得できる。これにより、設計段階での早期検討やCAEの事前確認が可能となり、専任者による本格的なCAEの実施回数の削減、製品設計/開発期間の大幅な短縮につなげられる。
例えば、メッシュ数が1.7億にも及ぶ自動車の大規模モデルに対して空力解析を実施しようとすると、従来16.3時間かかっていたところ、3D-OWLであればCAEを実行することなく約1分で解析結果の予測が行える。また、形状データもメッシュ形状で1G〜2GBあったものが、2D画像化されることで1MB程度に抑えられる。
「近年、CAEの結果をAIで高速に予測するサロゲートモデルのアプローチが注目されているが、3D-OWLはどんなに大規模なメッシュ形状が入力されても、それを2D画像として扱えるため、計算処理の負荷が非常に軽く、汎用(はんよう)PCでも動かせる。ローカルPCで動作するように設計しているため、重要なデータをクラウドにアップする必要もない。また、ユーザーフレンドリーなGUIも備わっており、CAEの専門知識がなくても直感的に使うことができる」(説明員)
展示ブースでは、共同研究の成果としてトヨタ車体が「自動車技術会2024 秋季大会」で発表した「ミニバン車両を対象とした空力性能サロゲートモデル構築の検討」の概要についても紹介していた。
3D-OWLを設計開発のプロセスに組み込むことで、CAEを実施すべき設計候補の絞り込みが可能となり、CAEの実施回数の削減や解析専任者の負荷軽減につながる。また、設計者自身が3D-OWLを活用することで、設計案のトライ&エラーのサイクルを素早く回せるようになり、設計バリエーションの幅が広がることも期待される。
「3D-OWLは、基本的に形状と結果のデータセットであれば何でも扱うことができるため、空力解析に限らず、いろいろな場面の性能評価などに使える。自動車に限らず幅広い分野で活用が広がりつつある。中にはCAEの結果ではなく、実機による実験結果を学習させて利用しているケースもある」(説明員)
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