今やCADのビュワーはいろいろあるけれど、CAEのビュワーはそれほど見掛けない。データ容量が巨大化してきているCAEにも、ビュワーのニーズは確実にあるはず。
残暑はいつまで続くのかと思ったら、急に涼しくなってきました。こんな季節の変わり目はイベントのシーズンでもありますね。“3Dな業界”でも多くのイベントが開催されています。
イベントといえば、やはりいろいろなテクノロジーに目がいきます。「新しいもの」はもちろん、「以前からあるものの、ニーズが出てきたことで急にクローズアップされてきたもの」などもあります。水野的にはやはり、3D(3次元)によるコラボレーションに注目しています。私が言うまでもなく、3Dの価値は、開発プロセスにかかわる多様な人たちの間で、さまざまな形で活用されることで増幅されていきます。つまり、コラボレーションが促進できてこそ、その価値が大きくなるということですね。
実際、CADの分野ではいろいろな形でのコラボレーションが進行していますね。設計者が使用する3次元CADのデータは、例えばレンダリングされてプレゼン用の画像になったり、あるいは機械モノの場合ならきれいな動画に化けたりします。
もちろん、開発プロセスの中でもそのデータ自体も軽量化されて、ビュワーで軽く動かせます。最近ではiPadのようなタブレット端末にも対応したビュワーアプリケーションがどんどん出てきています。筆者のiPadにインストールしてあるものだけでも、「Inventor Publisher Mobile Viewer」「AutoCAD WS」「Solid Edge Mobile Viewer」「iXVL View」「STL Viewer」など、幾つもあります。
3次元CADの場合、随分前から「デザインレビューなどで軽快に動かしたい」という要求がありました。昔は、3次元CAD上で複雑なアセンブリを組んだまま動かそうとすると、そのデータが重過ぎる故にうまく動かなかったものです。このあたりのテクノロジーも、いまは進化してきていますね。
ともかく、ビュワーアプリケーションの発達もあって、これまで3次元データに接してこなかった人にとっても、その価値が認識されてきています。それにつれて、ベンダーも今まで以上に「3次元データを使う」ソリューションの開発にフォーカスしてきています。
CADではそんな感じですが……CAEの場合はどうなんでしょうか?
そういえば、「CAEとコラボレーション」って、あまり聞かないようなキーワードですよね。例えば、データマネジメントの話題になると、「3次元CADのアセンブリから、BOMへ展開すること」が出てきます。しかし、CAEのデータって、“一応、そこにひも付けられます”的な位置付けである、と感じているのは筆者だけなのでしょうか。仕様書とか報告書に使われるオフィス系の書類と同じ扱いとまではいいませんが……。
もともと、現場の設計者へのCAEの普及が、3次元CADよりも後追いであるということが関係しているかもしれません。もちろん、一部の大手企業では非常に高度な解析を昔から実施していることもあって、当然、全てがそうだとはいえません。ただ、製造業全体において、CAEデータがあまねく普及しているのか、といえばそうともいえないでしょう。
現在、従来のCAE専業ベンダーだけではなく、CADベンダーもCAEに力を入れていますし、ユーザーの需要も高まっているようですから、早晩CAEのデータの共有のニーズは、もっと表立ってくるのではないでしょうか。
CAEの情報の共有が顕在化してきたときに、そのデータの利用者のほとんどは、いわゆる「情報あるいはデータのコンシューマ(データの作り手ではない)」といった位置付けになるのでしょう。現在のCADデータも、データの作り手は基本的には設計者であって、残りの人たちは、それを確認したり意見したりする役割なので、軽量化されたデータを見るためのビュワーがありさえすればよいのです。CAEについても、それが求められることになりそうです。
ところで、そのようなニーズに対して、CAEに特化したツールってあるんでしょうか。
答えからいうと、それはあるのです。そんなツールの1つが「VCollab」というツールです。このツールは過去にMONOistでも簡単に取り上げられたこともありますし、私もまた他誌で簡単に取り上げたことがあります。
それなのに、今回あらためて取り上げようと考えたのは、「CAEのコラボレーションにおける活用」というニーズが近い将来に見えてきた今だからこそ。数年前より現在の方が、取り上げる価値があるだろうと考えたのでした。
というところで、VColloabを紹介しましょう(だんだんと、この連載も「製品&ガジェット紹介コーナー」になりかけているみたいですが……。笑)。
VCollabが目指すものは、言ってみれば「CAE版PDF」のようです。現時点では、同様な製品で、かつ確立されたソリューションがほかに存在していないようです。また今後、本当にCAEが多くの設計者レベルに普及し、開発プロセスのメインストリームの中に組み込まれてくるのであれば、さらに求められてくるソリューションになるでしょう。
次に、この手のソリューションが必要な理由をあらためて確認してみましょう。
ローカルで簡単に解析できるような規模のデータであれば確認も簡単です。ただし、少し本格的に解析を進めると、その解析結果のファイルは巨大化する傾向です。VCollabが提供している資料をベースに、その数字を示してみましょう(図1)。
ここでは、元の解析結果のファイルサイズ(図1「CAE Results File Size」の列)が、いかに巨大かを示しています。何を解析したのかまでは分かりませんが、ここに示されているANSYSのファイルに至っては14Gバイトもあります。それを使ってレビューなんて到底無理なサイズです。まるで「大き過ぎて全く動かないCADのアセンブリ」のようです。やはり、CAEのデータの場合においても、データの軽量化が必要だということが、数値的にも見えてきます。
実際にVCollabというソリューションを通すことで、それがどうなるのか。それが図1の表の左から2つ目の列(「CAX File Size」:VCollabのフォーマットに変換後のサイズ)です。リダクション(縮小)率があまり大きくない例(といっても60%に縮んでいます)から、99%以上の圧縮が実現された例まで、状況にバラつきはありますが、いずれにしても数十M〜100Mバイトを超える程度です。一般的なスペックのPCで十分にハンドリングできるレベルです。
CADの場合もそうですが、レビューの際は会議の流れに合わせて、必要なものをタイミングよく表示していく必要がありますが、このデータサイズなら大丈夫そうですね。
さて、データの流れとしてはどんな感じになるのでしょうか。概念図としては以下の図2のような感じです。
図2の内容を平たく説明すれば、
ということですね。つまり、このあたりの話が、ベンダーの言うところの「CAE版PDF」といったところでしょうか。
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