ところで、実はここでもう1つ着目しておきたい点があります。それはまさに、「マルチフィジックス的な話」に通じることです。ソルバー的に見ればもちろん、「それぞれ異なる領域の解析を相互に関連付けながら、より忠実に現実の世界を反映した解析を目指す」ということになると思います。このように複数の解析データを1つのビュワーの中で扱うことで、マルチディシプリン(複合領域)ビュワーとなり得るといえます。
さて、3つ目に取り上げたいのが、「インタラクティブな環境」です。CAEの結果データを他人と共有したい場合、どうするでしょうか? 例えば、「あらかじめ重要だと思う部分をピックアップして、画面上の画像をスクリーンキャプチャーしておく」、あるいは「AVIなどの動画にする」といった手段を取ります。それはデータ作成者が一方的に判断して画像や動画を送るだけであって、インタラクティブではありません。
それらの作業は、CADでもCAEでも、はっきり言って、非常に面倒です。ついこの間、筆者自身も、顧客の要望に応じてかなりの量のCADの画像をキャプチャーしました。まだ確認できていないところがあれば、さらにキャプチャーし……、というやりとりになり、非常に煩雑なコミュニケーションになりました。
CADの場合、各ベンダーが提供する3次元ビュワーの普及により、さすがにこのような面倒なことはだいぶ減ってきてはいます。しかしCAEの場合、まだこの環境が続いているといえます。
さらに、CAEのデータは、あくまでも「設計検証するための裏付け」とも言えます。ということは、「CADのジオメトリも含めて、インタラクティブに検証結果を見たい」という話になると思います。
ということで、今回の結論は、「この手のソリューションに、もっと目を向ける時期ではないか」ということなのです。
開発プロセスにかかわるさまざまなデータは、それぞれの専用システムや、それを使う関係者のサイロにとどまっている状態であることが多いでしょう。
一方、開発プロセスにかかわるさまざまな立場の人たちは、「なぜそうなのか」「なぜこのオプションがよいのか」といったことを納得した上で、設計開発を進めたいと考えるでしょう。それをかなえるためには、設計検証の観点からいうなら、解析結果も効率的にシェアされる必要があるのではないかと思うのです。
3次元データも含めて本格的なコラボレーションはまだまだこれからです。設計開発プロセスを見える化し、より多くの関係者が納得した形でプロセスを進めるためには、このような後処理ツールが今後「どのくらい進化するか」「いかに多くの人に活用されるか」にかかっていると思うのです。
今回は、どちらというとCAEビュワーの有効性について述べていたので、あまり製品については突っ込んだ説明はしていません。ツールの詳しい情報を知りたい方はVCollabのWebサイトを見てみてください。
VCollabのコミュニティーサイトも用意されています。登録さえすれば誰でも使えます。興味のある方は、「ただ見るだけよ」のLite版ビュワーで、実際に触ってみてはいかがでしょう。日本語のコミュニティーサイトもありますが、米国の方が充実しているようなので、英語が得意な方はこちらものぞいてみてください。
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