今回紹介するのは、シンクタンクの研究員さんによるネコグッズ開発。個人的なモノづくりが、きちんと自社の業務や政策提言にもつながるとのことなのです。さてさて……
先日、Maker Faire Tokyoが開催されましたが、その頃も仕事に追われていた水野です。
2014年11月22日に放映されたBSジャパン「NIKKEIプラス1をみてみよう!」ではイヌ(架空キャラ)を相手に3Dプリンタの使い方について説明しました。3Dプリンタという存在は、今、さまざまな場所であらためてモノづくりに対する興味を向けさせています。
それには政策を考える人たちも含まれています。つまり、モノづくりに関係するところでは、経済産業省(以下、経産省)をはじめとする省庁ですね。さて、そのような省庁では、さまざまなシンクタンクを活用して調査を行い、政策提言を受けたさまざまな施策を考えています。
今回は、そのようなシンクタンクの1つ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)の経済・社会政策部 研究員、北洋祐さんによる3Dプリンタがらみの面白い取り組みについて紹介します。
北さんが初めて3D-GANに私を訪ねてくださったのは、2014年の8月のはじめでした。3D-GANで私が担当するクイック相談サービスにお申込みいただいていたのです。実はMURCが発行する雑誌「季刊 政策・経営研究」に昨年寄稿させていただいたご縁もあって、いらっしゃる前から親しみを感じていました。
今回の相談の件は、何と、「自分でモノづくりをしたい!」とのことでした。単なる個人的な趣味というわけではなく、それが北さんの業務、ひいてはMURCの政策提言にもつながるとのこと。私の頭の中で少しの「?」マークがめぐりながらも、話が進んでいきました。
北さんはMURCの研究員として、経産省や中小企業庁などの官庁の他、各地域の役所をはじめとする地域の産業振興にかかわっています。その成果は「ものづくり白書」や「中小企業白書」という形になります。場合によっては、地域事業の事業化支援まで踏み込んでいます。そんな中、世の中で3Dプリンタブームが起きました。それが地域の企業にとってチャンスになるのか? もしそうであるならばお手伝いをしよう! ということでMURCの調査が始まったのです。
MURCでは通常、「すでに起こっていること」を調査して、官庁や役所などへの提案としてまとめます。ただ今回はテクノロジーの変化があまりに大きく、従来の後追い式では政策提言まで持っていくことが難しいと北さんは感じたそうです。ならば、「自分も、何らかの形でその渦中に飛び込んで実際にモノづくりに携わって、その成果を発信してはどうか」と考えたというわけですね。
北さんは、苦労しながらも、社内で順調に承認を受け予算も獲得し、ついにプロジェクトがスタートしました。そのプロジェクトは「MONO-P」と名付けられ、北さん以外に、5人の若手社員もメンバーに加わりました。北さんとは別部門の人たちでしたが、モノに対してこだわりがあり、これからのシンクタンクの在り方を真剣に考えていたのです。
プロジェクトのゴールは「実際に製造、量産にまで持っていくこと」。やはり、日ごろからさまざまな地域の企業のことを考えているだけあって、ゴールは小さくまとまった感じではありません。
私の理解の範囲ですが、このプロジェクトが目指しているのは以下でしょう。
……とはいうものの、スタートはあくまでも個別の小さなプロダクト。それぞれが、自分が一番欲しいものを形にすることにしました。
プロジェクトメンバーの皆さんは「使いやすいポータブルハンガー」「会社用アイスクリームスプーン」「牛乳用パックケース」といったお題を決めました。そして今回のリーダーである北さんは「無類のネコ好き」ということで、「ネコトイレとネコおもちゃ」に。
以降では主に北さんの取り組みを紹介します。
北さんが「ネコトイレとネコおもちゃ」というテーマに着目したのには2つの理由がありました。
まずネコトイレについて、以下が北さんの発想の原点でした。
次に「ネコのおもちゃ」ですが、「室内飼いで刺激に対する反応が鈍くなりがちなネコたちの“野性を呼び覚ます”ものが欲しい」ということでした。
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