北さんたちの持ち時間が非常に限られていたので、セミナーを開催するに当たり、まず拙著「自宅ではじめるモノづくり超入門」の内容を一通り試していただいて、「自己流で構わないので、自分が実際に作りたいものをモデリングしてきて」という宿題を出させていただきました。
トレーニングは全2日間。北さんたちの通常業務が終わった午後6時から始めました。特に初日は熱が入ってしまい、ふと気が付けば22時を回っていました。
うれしいことに、参加者の皆さんが、きちんと宿題に取り組んでくださっていたので、トレーニングは速やかに進みました。
といった話をしつつ、「123D Design」で自分が狙う形状をどのように作ればよいのか、全員で知識を共有できるように、デモを交えながら、実際の製品のモデリングを検討していきました。
ということで、「アイデアを形にする」ということはできるようになってきました。とはいえ、これだけでは「欲しいモノ」はできません。
そして、自ら取り組んだからこそ、以下のような課題も実感できたみたいです。
実際にこういうことを体験した人からよく聞く話ですが、これらのことを政策提言を業務にしているシンクタンクの方に身をもって体験していただいた、というのは非常に意味のあることだと思っています。
課題を実感する一方で、何とかオリジナルの商品を手掛けたい、という動きも一方ではあるわけです。さて、本格的に事を進めるためには一体、どのようなことをすればよいのか?
北さんが自らのネコトイレの企画を引っ提げて、向かった先が新潟の燕三条でした。企業団体「試作・小ロット品対応力強化プロジェクト」と接触し、企画についての説明会を開催したのです。
実は北さん、会合前は非常に緊張していたそうです。しかし皆さん、プレゼンテーションの内容をよく理解してくださり、その団体メンバーの企業さんたちの技術を使うことで、実際の製品ができるかも、という感触を得られたようです。
当初考えていたホーローのものではないようですが、少なくともイメージしていた製品の第一歩は踏み出せそうです。
先日、北さんにお会いした時には、2014年12月のはじめに次の会合が予定されているとのことで、いよいよ本格的に試作に向けての動きが出てきそうです。
個人のデザイナーや製品開発者と、モノづくり企業とのマッチングの必要性について言われて久しいですが、より大きなフレームワークを定義する政策レベルでは、どうしても話が大まかすぎて、細かい実行レベルでどうしたらよいのか、ということについては具体策に欠けているのが現状ではないでしょうか。
それだからこそ、シンクタンクの人たちが、このようにマッチングをするということはどういうことなのか、その当事者となった経験を生かしていく、ということに期待したいと思います。
ということで、この話、実は「To Be Continued」なのですが、今、北さんのデータを基に3Dプリンタでの試作に取り掛かろうとしているとのこと。順調にいけば、来年のはじめには試作品ができているかもしれません。
ちなみに、北さんが取り組んでいるのは、「自分の企画を形にしてみる」というだけではありません。当然、資金調達(ファンディング)の面もあるし、販売や宣伝をどうするのか、ということについても視野に入れています
さらにコミュニティの活用も考えており、彼のネコグッズについては、すでに愛猫家集団を組織しつつあります(現在のところ社内の愛猫家有志+一部の外部の人のようですが)。そのような人たちのニーズに、地域のモノづくりのシーズをうまく組み合わせることで、新たなものを作ることができるわけです。
3次元CADや3Dプリンタは関わっていませんが、その先鞭となったのが、冒頭で説明した「野性を呼び覚ますネコのおもちゃ」でした。実はトイレに先行してすでに試作品ができていました。
このネコのおもちゃは、岐阜県は郡上の鹿革を使ったものです。ぜいたくなおもちゃですね。北さんが実際に試してみたところ、少なくともこの動画を見る限りにおいては大成功のようです。ただし、試作品の数がまだ少なく、結果も個体によってばらつきがあるようです。なので北さんとしては、愛猫家集団の皆さんに実際に試してもらいたいとお考えのようです。
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