設計者CAEもクラウドも「まだこれから」。2013年のCAD/CAE/PLM3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(22)(2/2 ページ)

» 2013年02月18日 10時00分 公開
[水野操 テクノロジーコラムニスト/3D-GAN,MONOist]
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いろいろなクラウドサービスが登場

 最後は、クラウドについて触れます。

 業務ユースか個人ユースかを問わず、最近は、クラウド上でのデータの保管、アプリケーションの提供が当たり前になってきました。

 かつて日本の製造業においては、「社外にデータを保存する」ということは考えられないことでした。ところが2011年3月11日以降、BCP(Business continuity plan:事業継続計画)の観点から、急にクラウドが注目され出しました。データの保存はともかく……、2012年は、CAEやレンダリングなど大きなコンピュータリソースを使う作業をクラウドで提供するサービスが出てきました。

 CAEについては、先ほども述べたように、2012年からAutodeskが、クラウドCAEを提供開始し、ライセンス自体の形態はサブスクリプション形式が採られました。既にクラウドCADに関しても、同社は「Fusion360」の提供開始を既に発表しています。PLMの「Autodesk360」も既にあります。

 国内では、電通国際情報サービス(ISID)が「Plexus」という、PDMをはじめとするさまざまなクラウドベースサービスの提供を開始しました。Plexusの場合、PDMに限らず、データバックアップなどBCPを意識したサービスを展開しています。

 ただし、業界筋から聞こえてくる話を総合すると……、クラウドベースのシステムは「まだまだ、これからだろう」といったところが正直なところです。

 確かに現在、世の中にあるクラウドベースのPDMやアプリケーションの情報は、ベンダーによる製品紹介の情報、つまり「仮の事例」がほとんどであって、実際のユーザー事例は、まだそれほど見掛けません。

 現実問題として、自社の設計情報については、やはり「自社で、オンプレミスのシステムで管理したい」というニーズの方が強いでしょう。

オンプレミス(on-premise/自社運用/社内設置)
情報システムを利用するに当たり、自社管理下にある設備に機材を設置し、ソフトウェアを配備・運用する形態のこと。

 一方、クラウドベースで提供されるサービスは大抵、セットアップや設定が非常に簡単です。さらに、普通は一括の初期投資が必要ではなく、「必要なシステムについて、必要な期間分だけ料金を支払う」という契約が主流なので、コスト面でも有利です。

 2013年は、ユーザーがそのようなメリットと、自社でシステムを構築するメリットを比較した結果、クラウドベースのPLMやアプリケーションを選択するのかどうか、注目していきたいところです。

販売サイドの変化にも期待したい

 最後にもう1つ、私が3次元データ業界に期待したいことは、「従来の枠組みを超えて3次元データを活用する」ような取り組みが、もっと増えてくることです。

 現在、ソフトウェアを販売するベンダーの態勢は、「CADはCAD」「CGはCG」、あるいは「製造は製造」「建築は建築」「エンターテイメントはエンターテイメント」……などと分かれています。同じ3次元データを扱っているのに、売っている人たちの間で、さまざまな分野が相互にクロスしていないのです。

 ユーザーサイドだけではなく、販売サイドも柔軟に、さまざまな3次元のツールを行き来すれば、「本当の意味での3次元データ活用」が進むのではないかと私は考えています。そんな動きも、2013年の3次元データ業界に期待したいと思います。

筆者からお知らせ

2012年末に「Kindle Direct Publishing」を利用した3次元プリンタの入門本を出版しました。それほどボリュームのある本ではありませんが、3次元プリンタの基本的な情報を網羅したつもりです。既に業界通の方も、そうでない方も、ちょっとしたリファレンスにはなるかと思いますので、よろしければぜひどうぞ。

「初心者Makersのための3Dプリンタ&周辺ツール活用ガイド」(Kindle版)

Kindleをお持ちでない方は、iPhoneやiPad、Androidをお持ちであれば、フリーのKindleアプリを使って閲覧できます。



Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。マルチ・ディメンション合同会社社長。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。



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