こんなに素晴らしい機能なのに、なぜ履歴ありのフィーチャ(オーダードフィーチャ)も維持しているのでしょうか。
それは、「過去バージョンからのユーザーがいるから」です。
現在のSolid Edgeでは、立ち上げるとデフォルト設定になっているシンクロナスモードとともに、作業中に、いわゆる「履歴付きのフィーチャ」である「オーダード・フィーチャ」に切り替えて作業をすることができます。従来のSolid Edgeを使用してきたユーザーもいる以上は、「シンクロナスだけ」というわけにはいかないのは、当然ですね。
もっと積極的な理由もあります。
やはり、履歴があった方が用がよいフィーチャは存在します。だから、作っているパーツの全てが履歴付きのフィーチャである必要はないのだけれど、用途に応じて使い分けられた方がいいですよね。「何が何でも、シンクロナス!」というわけではないのです。
実際のユーザーさんも、本当にそうやって使い分けているようです。いわゆる“定型的な部品”については、従来通りの履歴のあるやり方で、逆に“新規の部品”で“何か特定のルールがない”ような部品の場合には、シンクロナスで、という具合にです。
そして世の中にある3次元CADで恐らく、Solid Edgeだけの特徴といえるのが、「1つのデータの中に“履歴あり”と“履歴なし”のモデルを同時に混在させながら作業できること」です。つまり、本当の意味で、「適材適所で使い分ける」ということができるCADなのです。
そうそう、何で履歴つきフィーチャのことを「オーダード」フィーチャって言うんでしょうか。
「オーダード(Orderd)」を辞書で調べると、「順序付けられた」という意味が出てきます。まさに「履歴の流れ」ですね。シンクロナスが出始めとのときには「トラディショナル(Traditional)」という言葉が使われていたようです。つまり「伝統的な」という意味です。しかし、この言葉がどうも、「ユーザーの誤解を生みやすいのでは」という懸念があったようです。「トラディショナル」というと「昔のもの」というイメージがして、「直近になくなってしまうのでは」という懸念が出てしまうだろう、というわけでした。
しかし、従来手法(トラディショナル)もシンクロナスも、それぞれに特徴を持った道具であり、「どちらかが、どちらかをリプレースするのものではない」「一緒に使われていくものである」ということで、「オーダード」とリネームされたということなのです。
どうもシートメタルのモデリングでは、シンクロナスが使いやすいらしいですね。なぜかというと……、やっぱり「切った貼ったがやりやすいから」ということのようでした。
シンクロナスについては、「初心者に優しい」と説明されることがよくあります。
しかし、「履歴がない」とは言っても、スケッチをして、それを押し出したり、回転させたり……という流れ自体は変わりません。モデリング自体の難易度は、実はそんなに変わらなさそうな気がしたのです。
ところが、「履歴の操作を学ばなくてもよい」ということで、操作習得が随分と楽になる――というのが、シーメンスPLMソフトウェアの意見です。
確かに、モデルが巨大になってくると、いろいろな問題が起きますが、それが履歴に起因するということも少なくはありません。
最近のCADは、楽に形状が作れるようになっています。それだけに、形状はできたけれど、いざ変更をしようとすると問題を起こすものも少なくはないのです。やっぱり「作る順番」や「お作法」は大事というわけです。
本格的にCADを使用している会社であれば、モデリングのためのルールブックや「お作法ガイド」のようなものを用意したりしますね。しかし、履歴を心配しなくてよくなれば、本当に必要なのは、「設計」のガイドラインと必要最小限のモデリングのルールだけになります。なるほど確かに、これも大きい効果なのかもしれません。
関連リンク: | |
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⇒ | 従来のモデリング手法との比較(シーメンスPLMソフトウェア) |
ちなみに、シンクロナスのような機能が求められる流れは、一過性のものではなく、今後もさらに続いていくものなのでしょうか。これはやはり、続いていくのでしょう。
3次元CADユーザーを対象にしたある調査によれば、現在CADのオペレーションに絡む“最もムダな時間”が、「履歴に関係すること」という結果が出ているそうです。
モデルが巨大になればなるほど、待ち時間が増えて、それがムダというわけなのです。もちろん、前述したように履歴の操作を覚える必要がないというメリットもあります。
全てがシンクロナスのような履歴がないものに置き換わるわけではありません。しかし、なくて済むものなら、ない方がよいというのも真実ではないでしょうか。
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ということで、今回のまとめです(あくまで水野の印象です)。
シンクロナス・テクノロジの特徴は、「履歴がない」「ライブルールによって必要な幾何関係はきちんと維持したまま直接変更できる」「履歴付きのモデルと履歴なしのモデルが混在できる」ということ。
次回のCADは何でしょう。お楽しみに。
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