お気軽だけど侮れぬ。3Dスキャナで遊んでみた3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(11)(4/4 ページ)

» 2012年04月27日 12時11分 公開
[水野操 テクノロジーコラムニスト/3D-GAN,@IT MONOist]
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 しかし、このように作業をしていくと、自分が考えている以上に、多くの穴が開いていることが分かってきます。これを1つずつ直していくとなると、さすがにちょっと、気がめいってきます。

 そこで、残っている穴を一気に片付けるための“とっておき”の機能があるのです。それが「リラップ」という機能です。ダムダムボーイさんいわく、すなわちここが「35万円のツールにして、250万円並みの機能」なんだそうです。

 この機能を使うことで、とにもかくにも、図20のようにMoNoGon君がなんとか形になってくれました。ちなみに、今回は作業を簡略化するために足と尻尾は作業の途中で削除しています。

図19 位置合わせと穴埋めの作業が終了

その他のお得な機能

 ここでは詳細を割愛しますが、RapidWorksには、面を分割したりソリッドのオペレーションをする機能があります。

 機械部品では、わざわざ物をスキャンしなくても、寸法が分かれば、それを基に最初からモデリングをすれば良いのでは、と考えると思います。しかし場合によっては、ノギスで寸法をいちいち測るのが面倒だったり、角Rが曖昧でよく分からなかったりするケースもあると思います。

 図面がなければ、マニュアルで、物を一生懸命測定しながらモデリングします。で、その作業をするベースとして、スキャンデータを活用するという手もあるでしょう。

 スキャンデータをベースにして、RapidWorksでCAD的な形状修正をして、ある程度仕上げてから、CADにエキスポートします。その際には、フィーチャ履歴がついた形でエキスポートできるんです。これなら、3次元CADで引き続いて作業するときに楽ですね。

手動と全自動、どっちが良いか

 ちなみに、そうこうしてる間に、PICZAの方の作業が終わっていたようです(はい、全自動なので気が付かなかったのです。笑)。

 ちょっと足が取り切れていませんでしたが、それ以外は、なかなかきれいに出ていました。こっちは、位置合わせなども全く手を掛けずにやっているので、はっきりいって楽でしたね(笑)。

図20 PICZAによるスキャンデータ

 これだけを見るとPICZAのほうが圧倒的によさそうな気がしますが、必ずしもそうではないようです。

 「全自動でやる」ということは、「失敗したときに大変」だともいえるのです。今回のケースではたまたまうまくいったけれど、うまくいかない場合には“かなり大変”な結果になるみたいです。

 それから、位置合わせを“自分の納得いくようにやりたい”という人は、NextEngineの作業を好むようです。確かに手数は掛かるけれど、品質面をコントロールしたい場合には、その方がよいかもしれません。

 あと、RapidWorksは、OBJやIGES、パラソリッドなどでデータをエキスポートできますが、LPX EX studioの場合にはSTLで出力する形になります。

さてこの後、どうしましょう?

 ここではNextEngineのデータをベースに話を進めます。

 さて、スキャンをして、取りあえずCGやCADで扱えるようになったら、後は“煮て食おうが”“焼いて食おうが”、ユーザー次第。“ポリゴン的な”CGっぽい作業も、この後は自由にできます。

 今回は、スキャンしたままのゆず肌の状況が気になるので、OBJファイルでエキスポートして、「Sculptris」というソフトを使ってデータの修正を行ってみました。

図21 SculptrisでMoNoGon君の表面を滑らかにした例

 フィギュアなどではなくて、CAD的な(機械的な)幾何形状ではどうでしょうか。先ほど述べたように、RapidWorksでは「押し出し」など3次元CAD的なオペレーションができ、そこで修正したデータは履歴付きでエキスポートできますので、それ以降は本格的なモデリングをすることもできるでしょう(今回はそこまで試していませんが)。

 そんなわけで「だからどうした?」って結論になりそうなんですが。

 いずれにしても、スキャンした後に結構な手間は掛かると思うので、スキャンしたデータをどうしたいのか、そもそもスキャンからデータを起こすの適切なのか、ということをあらかじめ考えておいた方が良いと思います。

 「タレントのスキャンデータから、AR用のデータに仕上げる」方法も存在します。せっかくの3次元データです。リアルにバーチャルに、柔軟に活用方法を検討してみるとよいでしょう。

 まあ、よく分からなければ、「取りあえず、試してみる」のがよいかもしれません。時間はかかりますが、材料代はそれほどかかるものではないですから。

筆者からお知らせ

スキャナを使いたい方へ

3D-GANでは、「スキャナを使いたい!」という人達向けに随時講座を開催しています。この講座に出ると、スキャナを使った作業が一通り自分でできるようになるほか、会員さんの場合には、事務所があいている時間に来て、スキャンを無料でできたりもします。ご興味のある方は下記のWebページをご確認ください。

http://www.3d-gan.jp/activities_lecture_scan.html

3D-GANに遊びに来てくださいね

 秋葉原にきた際は、ぜひ3D-GANの事務所に遊びに来てください。GW中は、一部休みになるので、Webサイトでカレンダーを確認してください(お姉さんは事務所に待機していません)。



Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。首都圏産業活性化協会(TAMA協会)コーディネータ。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)がある。




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