アラスジャパンは、同社が展開するオープンソースPLMソフトウェアの最新バージョン「Aras Innovator 9.4」をリリースしたことを発表した。マルチCAD管理におけるファイル移行のパフォーマンス向上やマイクロソフトの最新プラットフォームへの対応が特徴だ。
米Arasは2000年創業のPLMベンダー。同社の特徴が2007年から展開する「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」というビジネスモデルだ。
これは、PLMソフトウェアそのものは無償で、サポート費用やメンテナンス費用、カスタマイズを行うSIヤーへのライセンス費用などで利益を得るという、一種のサブスクリプション型のビジネスモデル。提供するPLMソフトウェアのIPはArasが保持し、サポート契約を結んだユーザー企業に対しては無償でバージョンアップなども行う。
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トライアル版ではなく、実際のPLMソフトウェアを使用して本格導入前に評価できる他、費用をかけずにスモールスタートが可能である点について、評価を得ているという。既にグローバルでは約450社が導入しており、日本企業でも日立製作所の電力システム社や日立金属など、50社が使用しているという。
日本法人アラスジャパンの社長 久次昌彦氏は「従来のPLMは導入してみるとCADファイルの変換や移動で思ったパフォーマンスが出ないなど、さまざまな問題があり、導入のリスクが大きかった。当社のビジネスモデルでは、実際のソフトウェアの使用感などに納得した上でサポート契約を結ぶという流れであるため、リスクを抑えることができる。その点が他社にない長所だ」と話す。
新たにリリースしたAras Innovator 9.4は、マイクロソフトの「Microsoft SQL Server 2012」「Windows Server 2012」「Windows 8」「Internet Explorer 10」をサポートした。Windowsベースの最新環境にほぼ対応した形だ。
また、主要な海外ベンダーのCADデータに対応する他、マルチCAD管理におけるチェックイン、チェックアウトのパフォーマンスを大幅に向上。新しいチェックイン/アウトマネージャーを搭載し、CADアセンブリー構造全体におけるプロセスの自動化や簡素化を実現。ストレスのない作業を実現するという。
その他、新たなサービスとして、企業間のデータ転送ツールを展開する米Trubiquityと提携し、セキュアなファイル交換を実現するサービス「TRUaras」をシステム内に組み込んだ。そのため、企業外部とのシームレスなファイル交換も可能としている。
新版はすでに同社のダウンロードページから入手可能だという。
今後については、秋に「Aras Innovator 10.0」をリリースする予定。現在のAras InnovatorはWindowsをベースとしたシステムだが、「10.0」では「Mac OS X」などのMacintoshプラットフォームにも対応予定。またブラウザもFirefoxやChromeなどへの対応を計画している。
さらに、PLMとしての機能もさらに広げていく方針でMBOMやALMなどについても対応していく方針だ。「グローバルでは2012年に黒字化したことで、開発強化を新たな方針に据えている。すでに開発陣は倍増。今後はさらなる機能拡張に取り組み、ユーザー企業のニーズに応えていく方針だ」と久次氏は話している。
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