モノ(デバイス)に限らず、さまざまなシステムとインターネットでつながれるIoTプラットフォーム「ThingWorx」は、これまでのPTC製品とは大きく異なった分野を非常に広くカバーする。広大なプラットフォームから、果たしてどのようなシステムが生まれるのか。
PTCジャパンは2014年2月17日、ITベンダー 米ThingWorx社買収に関する記者説明会を開催し、PTCにおける「モノのインターネット」(IoT)戦略について説明した(関連記事:「PTC、「モノのインターネット」向けアプリプラットフォーム開発企業を買収」)。米ThingWorx社は、IoT向けアプリケーション開発・運用プラットフォームを手掛けてきた。IoTは、あらゆる機器(デバイス)をインターネットに接続させる技術である。「ThingWorx」は機器類に限らず、センサー類や、さまざまな業務サービス、クラウドサービス、SNSなどとも接続し、リアルタイムなデータ収集や可視化、制御が可能なプラットフォームだ。
PTCにおける、ThingWorxの今後の方向性としては以下の3つだと米PTC CEOのジェームス・E・ヘプルマン氏は述べた。
PTC製品の拡張機能として比較的近い将来に実現しそうなのは、モノから送られる情報をトリガーとして PLM『Windchill』に格納されている三次元データを取り出して利用する、というものであり、2014年中には実現したいとヘプルマン氏。3次元データをサービスなど設計以外の業務で利用する仕組みは従来よりあるが、クラウドから送られる情報に基づいて、イベントに応じて利用するといった連携がThingWorxによって可能になる、とヘプルマン氏は述べた。
ThingWorxはあらゆるモノや仕組みとつながれる可能性がある広大なシステムであるが故に、PTCとしての具体的で詳細な展開は今も模索中であるようだ。以下のプレゼンテーションの図を見ると、ThingWorxが基盤となることで生まれるシステム内おいて、従来のPTCにおけるシステムはほんの一部分であると分かる。
例えば、自動車が市場に出てからの製品や顧客情報とサービス関連のシステムを連携させることで、リコールを未然に防ぐようなソリューションの実現も考えられる。ドライバーの運転技術を察知して保険会社が保険料金やサービス内容を細やかに設定するなど、新しいビジネスチャンスも想定できる。
ThingWorxはもともとオープンなシステムであり、顧客やパートナーがThingWorxを利用した独自アプリケーションも開発できるようにするという。
ThingWorxは従来、鉄鋼材料生産、交通管制、構造物監視、物流管理、ユニークなところでは養鶏場管理など、幅広い分野におけるクラウドサービスや業務サービスをネットワーク化してきた。このように米ThingWorx社は、PTCが強みとしてきた製造業以外にも広く顧客を抱えてきたことから、今後もPTCの子会社として経営継続する方針だという。
「マッキンゼー・グローバル・インスティチュートによる『破壊的技術』に関する調査報告書(2013年5月)によれば、IoTの経済効果は2025年までに年間2.7兆〜6.2兆ドルに達するという。これは、3Dプリンティングの分野の約10倍という数値」とヘプルマン氏は、同社がIoT分野に投資する根拠の1つについて述べた。ちなみに、同調査で最も経済効果が大きいとされたのが、「モバイル インターネット」、次点が「自動化および知識労働」(ビッグデータ関係など)で、IoTは3位、3Dプリンティングは9位だった。
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