パナソニックがバリカンを拡販、カギは「カッコいい理容師」との協力イノベーションのレシピ(1/2 ページ)

パナソニック くらしアプライアンス社は理美容師向けのプロ用バリカンの新シリーズ「THE BARIKAN」を立ち上げ、第1弾商品となるT字トリマーを発表した。

» 2025年07月16日 06時15分 公開
[齊藤由希MONOist]

 パナソニック くらしアプライアンス社(以下パナソニック)は2025年7月14日、理美容師向けのプロ用バリカンの新シリーズ「THE BARIKAN」を立ち上げ、第1弾商品となるT字トリマーを発表した。同商品は2025年9月に日欧で発売する。

 T字トリマーは、フェードスタイル(トップに向けて徐々に髪が長くなるようにグラデーションでつなげる刈り上げ)の他、耳回りや額などの造形を細部まで整えるためのツールだ。一般的な“床屋さん”よりも洗練された理容室や、そこで働く理容師による「バーバー(barber)カルチャー」での利用拡大を見込む。日本国内外で店舗を持つバーバーショップと連携することで、プロ用バリカンシリーズの拡販につなげる。

 新シリーズは米国やアジアでも販売し、理美容師向けのプロ用商品全体として2030年までに100億円ほどの売り上げを目指す。人種ごとに異なる髪質に対応した商品も展開するなど、今後3年間でシリーズのラインアップを拡充する。また、マーケティングでは日本発のシリーズであることを全面的に打ち出し、商品の生産も日本で行う。

 バリカンの由来は、明治/大正時代に日本に持ち込まれた手動のバリカンを製造していたフランス企業「Bariquand et Marre」だ。英語圏ではバリカンではなく「クリッパー」と呼ばれる。日本で一般名詞として定着したバリカンをシリーズ名とすることで、日本らしさをアピールする。

プロ用バリカンの新シリーズを展開する[クリックで拡大] 出所:パナソニック

40年以上の歴史があるパナソニックのバリカン

 パナソニックは電気シェーバーの技術を応用して1982年にプロ用バリカン事業に参入した。品質や使いやすさ、精密なカットなど商品の性能や販売体制の強さを生かして、日本と欧州(ドイツ、フランス、イタリア)で高いシェアを築いてきた。コロナ禍の2020年には巣ごもり需要で過去最高の出荷台数となったが、その後は減少傾向が続いている。その要因として、美容師向けが商品開発の中心だったことが影響しているという。

 美容師向けのプロ用バリカンは理容師向けほど精密なカットを重視しない。そのため、フェードスタイルの浸透やグラデーションの美しさなどの技術進化、SNSを通じたバーバー人気による理容師向けプロ用バリカンの需要拡大にパナソニックは対応できていなかった。

 美容師向けのプロ用バリカンは形状や刃などがそもそも精密なカットに適していないため、理容師のニーズを取り込んで新シリーズを用意した。細部まで仕上がりを確認しながら作業できるスリムネック形状を採用した他、アジア人の太い髪もスムーズにカットできる日本製かつ自社製の高性能刃と、高回転のリニアモーターを搭載する。刃は精密加工により肌に優しく、繊細なスタイルの仕上げにも対応する。

 また、角度をつけたカットでも持ちやすく動かしやすいエルゴノミックデザインを取り入れた。バーバーカルチャーの理容師が特に重視する、道具として愛用できるカッコよさにもこだわった。従来の美容師向けプロ用バリカンは家電のようなデザインなのがバーバーカルチャーに売り込んでいく上で課題だったため、理容師向けでは新たに意匠にこだわった。

プロ用バリカンの新シリーズ「THE BARIKAN」の第1弾商品となるT字トリマー[クリックで拡大]
(左)写真内の左側にあるのが美容師向け。写真内右側の理容師向けはネックが細く刃が当たる位置が見やすい。(右)リニアモーターによる回転数の高さを示すデモ[クリックで拡大]
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