ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は日本企業の海外事業について解説します。
前回までは日本と、米国、中国との貿易における関係性について2回に分けて解説してきました。対米国では、工業製品の輸出が超過していて、対中国では、コンピュータや家電製品で輸入が超過している状況などが見えてきましたね。
今回は日本の経済活動の中で、海外との関係で重要となる海外事業についてご紹介します。
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企業活動はグローバル化が進んでいます。このグローバル化には、大きく2つの性格の異なる活動があります。
1つは、前回までにご紹介した貿易です。貿易には、自国で生産したモノやサービスを海外に販売する輸出と、海外のモノやサービスを購入する輸入の2方向があります。輸出から輸入を差し引いた純輸出が、GDPに加えられる項目でもあり非常に重要な要素となります。
日本の貿易は少しずつ拡大していますが、世界の拡大傾向からすると緩やかで、貿易面における存在感が低下しているのは以前の記事でもお伝えしました。現在では人口や経済規模の割には貿易の少ない国と言えます。
もう1つが、今回取り上げる海外事業(対外活動)です。海外事業とは、相手国に現地法人(海外子会社)や支店を設立し生産活動を行うことです。現在では、支店よりもより大規模な事業に向いた現地法人による経済活動が主流となっているようです。
今回は、海外事業基本調査から、日本企業の海外事業について共有したいと思います。日本企業は海外事業が活発化していますが、現地法人数やそこで働く労働者の推移を見るとその様子がよく分かります。まず、図1を見てみましょう。
日本企業の海外現地法人数は大きく増加傾向が続いてきました。統計で確認できる中で最も古い1988年では7544社でしたが、最新の2023年では2万4058社と3倍以上に増加しています。
また、現地法人で働く常時従業者数も133万人から、532万人と4倍に増加しています。もちろん、現地法人で働く労働者は、主に現地の国や地域の人が雇われることになります。
例えば、日本の法人企業の労働者数は約4400万人と集計されています(法人企業統計調査の数値、金融保険業を除く、期中平均従業員数)。外資系企業の日本法人もあるので一概にはいえませんが、ざっくり見ると日本の法人企業の労働者の1割強に当たる人が、海外で働いているということになります。
ただ、日本企業による海外事業は大きく拡大してきたものの、企業数を見ても、常時従業者数を見ても、近年はやや減少傾向に転じています。コロナ禍による一時的な影響なのか、既に海外事業が縮小傾向に転じているのか、今後の推移が気になるところですね。
日本の海外現地法人による活動は拡大が続いたのですが、具体的な売上高や当期純利益についても確認してみましょう。図2をご覧ください。
海外現地法人の売上高と当期純利益は、コロナ禍による下落が確認できるものの、この数年は大きく拡大し、過去最高を更新しています。2023年には売上高で374兆円、当期純利益で14兆円に達しています。
法人企業統計調査による日本企業の売上高は1633兆円、当期純利益は80兆円ですので、海外事業は、日本における事業の5分の1程度に相当する規模に拡大していることになります。輸出額が129兆円ですので、売上高で見ればその3倍程度の規模となります。日本企業のグローバル化は活発化していますが、貿易というよりも海外事業の拡大傾向の方が強く、規模も大きいということになりそうです。
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