かつての“輸出大国”日本の復活はあるのか 貿易データが示す立ち位置の変化小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(39)(1/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は日本の貿易の変化や国際的な立ち位置について紹介します。

» 2025年09月25日 08時00分 公開

 前回は日本の「相対的貧困率(Poverty rate)」の国際比較を行いました。日本は「市場所得」での相対的貧困率は低いものの、再分配後の「可処分所得」の相対的貧困率は高く、再分配があまりうまくいっていないという現状が見えましたね。

 今回からは少し視点を変え、貿易について取り上げていきます。2022年以降に進んだ円安や、関税を巡る混乱によって、日本の貿易に関する環境が急激に変化しています。今後どのように変化していくのか見えない中で、ひとまずこれまでの日本の貿易に関する状況を正確に把握しておくことが重要です。そのため、今回から3回にわたり、日本を取り巻く貿易(輸出、輸入)の各種指標について紹介していきます。さまざまなデータの出典元はOECD Data Explorerです。

 まず今回は、日本の貿易の概要について取り上げます。次回は重要な貿易相手国である米国、中国の貿易額とシェアの変化について紹介するつもりです。そして、最後に対米、対中貿易の詳細な中身について紹介します。

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日本の貿易の変化

 今回は、日本の貿易の規模がどのように変化してきたのか、国際的な日本の立ち位置などについて概況を確認していきましょう。

 貿易は「[財貨=モノ]の輸出、輸入」と、「サービスの輸出、輸入」の2つに区分されます。

 財貨とは、工業製品や鉱物性燃料、食品や飲料などモノの動きを指します。サービスの輸出入とは、輸送や旅行、情報通信など、海外との無形の受け払いのことを指します。

 例えば、海外からの旅行客が国内で支払った金額はインバウンドと呼ばれますが、統計上は旅行に区分され、サービスの輸出の一部となります。あるいは、日本における海外企業の情報サービスの利用料金は、情報通信に区分されるサービスの輸入ということになりますね。

 具体的なモノ(財貨)以外の海外との受け払いが増えることで、このようなサービスの輸出入も増えています。

 それでは、これらを踏まえた上で、日本の貿易は現在どのような状況なのでしょうか。まずは、全体的な推移から見てみましょう。図1は日本の財貨とサービスの輸出、輸入を示しています。

photo 図1 日本の財貨とサービスの輸出、輸入の様子[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者が作成

 日本の貿易は、輸出も輸入も拡大傾向が続いてきたことが分かります。リーマンショック後の2009年、コロナ禍の影響の大きかった2020年にはどちらも大きな減少が見られますね。

 2023年には輸出は129兆円、輸入が138兆円とどちらも100兆円を超える規模となっています。財貨で見ると輸出が100兆円、輸入が107兆円で7兆円の輸入超過となっています。サービスで見ると輸出が29兆円、輸入が31兆円とこちらも2兆円の輸入超過です。ただ、財貨もサービスも輸出と輸入がほぼ同じ程度ということはいえます。

 また、輸出から輸入を差し引いたものが純輸出と呼ばれ、GDPの支出面に加えられる指標となります。海外とのやりとりで、どれだけ受け取り(または支払い)が超過しているかという正味の金額です。国内統計では、貿易収支などとも呼ばれています。

 日本の財貨とサービスの純輸出は、2010年頃まではプラスで推移していましたが、近年はほぼゼロかマイナスです。2023年はマイナス9兆円となっています。日本の場合、かつてのように輸出で海外から稼ぐというよりも、海外投資からの配当金などの収益で稼ぐように変化しているというのは良く指摘されているところです。

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