IVIは「IVI公開シンポジウム2025-Autumn-」を開催。本稿では、IVI 理事長の西岡靖之氏が、IVIオピニオンとして講演した「ようやく見えたDXの本当の意味〜日本版インダストリー4.0の提案」の内容を紹介する。
「つながる工場」実現に向けた企業を超えた取り組みを行うIndustrial Value Chain Initiative(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ、IVI)は2025年10月9日、都内で「IVI公開シンポジウム2025-Autumn-」を開催した。本稿では、IVI 理事長の西岡靖之氏(法政大学 教授)が、IVIオピニオンとして講演した「ようやく見えたDXの本当の意味〜日本版インダストリー4.0の提案」の内容を紹介する。
IVIは、モノづくりとデジタル技術を融合することで、現場の課題を解決することを目指し、2015年6月に設立された団体だ。日本機械学会 生産システム部門の「つながる工場」分科会を母体とし、“緩やかな標準”などを切り口に、日本のモノづくりの良さを生かしたデジタル化に取り組んできた。2011年にドイツでインダストリー4.0が提唱された後、日本のモノづくりを生かした製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)の在り方を模索する中で、一貫して「日本らしさ」を追求してきたことが特徴だ。
インダストリー4.0が提唱されてから14年、IVIが活動を開始してから10年が経過するが、製造業において、DXは本当に成果が出ているのだろうか。
情報処理推進機構「DX動向2024」によると「アナログ/物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性向上」については、取り組んでいる割合も成果が出ている割合も高く、順調に進んでいる結果を示している。一方で、「新規製品/サービスの創出」や「顧客起点の価値創造によるビジネスモデルの根本的な改革」は、取り組み割合、成果割合ともに低く、あまり取り組みも広がっておらず、成果も出ていないという状況が見える。
西岡氏は「あらためて、インダストリー4.0やDXを振り返ってみても、全てがうまくいっているわけではなく、思ったような成果が出ていないところも多い」と現状について考えを述べる。
インダストリー4.0では、製造業において、スマートファクトリー化が進展し、設備や製品がインターネットに接続された資産(IoT)として管理されるようになり、サプライチェーン全体でリアルタイムのデータ連携が行われるようになるとされてきた。また、PLM(Product Lifecycle Management)システムで、企画から設計、製造、保守、廃棄までデジタルスレッドで管理できるようになることが期待されている。
これらのシステムにAI(人工知能)が組み込まれるようになる中、あらためてデータの重要性に注目が集まっていると西岡氏は主張する。
「データとプログラムはどちらが重要かという議論もあるが、より重要なのはデータだ。プログラムだけあってデータがなければ何も価値を生まないが、データがあれば(アナログでも)価値を生み出すことはできる。その意味で、AIも重要だが戦略のコアではない。データをどう確保するかに投資することが企業は問われている」(西岡氏)
ただ、データについてもさまざまな種類がある。企業の取引や活動内容を記録するトランザクションデータや、データ処理のためのメタデータなどの他「最も重要になるのは、トランザクションデータを他から参照できるようにまとめたマスターデータがカギを握る。トランザクションデータを記録することは重要だが、マスターデータの形にまとめていなければ、石ころがたくさんあるようなものだ」と西岡氏は強調する。
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