「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative」が設立された。ドイツのインダストリー4.0など、IoTを基盤にモノづくりを革新しようとする動きが高まっているが、日本においてこれらを実現する土台にしていく方針だ。
2015年に3月に設立準備を進めると発表した「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は2015年6月18日、総会を開催し「設立」を発表した。欧米で加速するモノづくり革新に対し、日本の製造業の強みを生かした“緩やかな標準”作りに取り組んでいく(関連記事:「日本版インダストリー4.0」の萌芽か!? 「つながる工場」に向けIVIが始動)。
現在、全世界で製造工程を高度化させる「次世代モノづくり」を目指す動きが活発化している。ドイツでは連邦政府が主導する国家プロジェクト「インダストリー4.0」が進められており、主要なドイツ企業や研究機関、大学などが参加し、ビジョンの実現に向けて多くのクラスタが設立され研究開発が始まっている(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。一方米国では、IIC(インダストリアルインターネットコンソーシアム)として、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の産業実装に向けた取り組みが行われており、その一部として製造業向けでの検証などが進められている(関連記事:産業機器向けIoT団体「IIC」、その狙い)。
これらの取り組みで実現が期待されているのは、IoTの活用により自律的な生産活動が行われる「つながる工場(スマートファクトリー)」の実現だ。そして、そのポイントとなるのが「つながる」ということだ。日本の製造業は「現場力」が世界でもよく知られているように、現場の創意工夫により企業内連携を進めてきており、工場内を「つなげる」ということでは先進的な取り組みを進めてきた。
しかし、これらのIoTおよびICTの活用が進めば、工場内だけでなく企業全体や企業間の連携が必要となる。日本の製造業では競合関係にある企業同士も多いことから、これらの企業間連携がなかなか進まない状況があったが、IVIはこれらを打破するための“緩やかな連携”“緩やかな標準”を作るための場として設立された(関連記事:“日本版インダストリー4.0”のカギは“緩やかな標準”――新団体「IVI」発起人)。
3月の設立準備発表から参加企業を募っていたが、参加企業は、正会員が38社、サポート会員が9社、賛助会員が5社で合計52社となる。会員企業については、正会員は「モノづくりの現場を持つ企業」、サポート会員は「モノづくりとITの融合を支援する企業(ITベンダー)」、賛助会員は「賛同した団体や個人」と定義されている。
理事長には、発起人として設立を主導してきた法政大学デザイン工学部 教授 西岡靖之氏が就いた。また理事には熊谷博之氏(富士通)、今野浩好氏(今野製作所)、掘水修氏(日立製作所)、光行恵司氏(デンソー)、宮澤和男氏(製造科学技術センター)、森田温氏(三菱電機)、渡辺真也氏(IHI)が就任した。監事には羽田雅一氏(東洋ビジネスエンジニアリング)、日比野浩典氏(東京理科大学)が就いている。
IVIはもともとは、日本機械学会 生産システム部門の「つながる工場」分科会が母体となっているが、理事長となった西岡氏は「分科会で議論を進めるなかで、各社が同様の課題を抱えていることがIVI設立につながった。当初は分科会参加メンバーを中心に考えていたが想定した以上に反応があった。日本の製造業にとってメリットのある形を生み出していきたい」と抱負の述べている。
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