ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットなど、世界的にモノづくり革新の動きが加速し“仲間作り”が進む中、日本は各企業がバラバラでまとまる動きがなかった。こうした状況に危機意識を持ち“緩やかにつながる”ことを目指して2015年6月18日に発足するのが「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」だ。同団体の発起人である法政大学デザイン工学部 教授 西岡靖之氏に狙いと取り組みについて話を聞いた。
ドイツのインダストリー4.0(関連記事)や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアム(関連記事)など、ICT(情報通信技術)を活用した新たなモノづくりが全世界で大きな動きを見せる中、国内でも企業間の垣根を越えて、協力を進めようという動きが生まれている。それが2015年6月18日に設立するコンソーシアム「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」だ。
IVIは、日本機械学会生産システム部門の「つながる工場」分科会が母体となり、発足。発起人は法政大学デザイン工学部 教授 西岡靖之氏が務める。参加企業が企業の枠組みを超え、モノづくりを基軸に“緩やかな標準”による新たな連携の仕組みを作り出していくということが目的だ。2015年3月に「設立に向けた取り組みを進める」という会見を開催した(関連記事:「日本版インダストリー4.0」の萌芽か!? 「つながる工場」に向けIVIが始動)が、2015年6月18日に無事に設立できることになったという。
同団体には、IHI、NEC、オムロン、川崎重工業、神戸製作所、小島プレス工業、今野製作所、東芝、ニコン、パナソニック、日立製作所、富士通、マツダ、三菱電機、安川電機など30社以上が参加を表明しており、今後活動を本格化させていく。IVIの狙いと今後の取り組みについて、発起人の西岡氏に話を聞いた。
MONOist あらためてIVI設立の狙いについて教えてください。
西岡氏 ドイツや米国の動きなど、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の活用などにより自律的な生産活動が行われる「つながる工場(スマートファクトリー)」の実現を目指す動きが世界的に高まっている。海外のモノづくりプロジェクトは、FA領域やIT領域など、どこかに偏ったものが多く、これらを日本のモノづくりに当てはめた場合、必ずしも日本の製造業にとってはメリットにならない場合がある。日本には、日本の強みを生かせる日本独自のリファレンスモデル(参考となるモデル)が必要になる。
ただ、日本の多くの製造業では、工場の内部の仕組みについて基本的に外部に公開しておらず、他社と連携しようという文化そのものが薄い。IoT時代を迎えて、工場内部の機器やシステムが外部へとつながるようになる中で「協力できない」という状況がデメリットにつながるようになる。さらに、閉じた世界だけで取り組みを進めていると、オープン化が進むグローバルなモノづくりの中では孤立する恐れがある。そこで、緩やかな形でもいいので、日本の製造業およびモノづくり現場が連携し合える場を作らなければならないと考えた。
私が所属している日本機械学会生産システム部門では「つながる工場」分科会として、これらの動きを研究し提言などを行っていた。しかし、提言活動だけでは実効力のある価値を生み出すことはできない。同分科会の中でも同じ問題意識を共有できたので、これを母体として、より幅広い企業が参加できる仕組みを作ることにした。これがIVIとなる。
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