牧野フライス製作所は、同社に対してニデックが開始したTOB(株式公開買い付け)について、取締役会で反対の意見表明を決議した。
牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)は2025年4月10日、同社に対してニデックが同月4日から開始したTOB(株式公開買い付け)について、取締役会で反対の意見表明を決議したことを発表した。
発表に合わせて行ったオンライン記者会見で、牧野フライス 代表取締役社長の宮崎正太郎氏は「今回の検討を進める上で最大の課題となっているのが時間との戦いだ。”真摯な提案”を真摯に検討するための時間が欲しいということだ」と話した。
牧野フライスはニデックに対して再三、TOB開始日を2025年5月9日以降に延期することなどを求めてきた。牧野フライスは、複数の第三者から完全子会社化を目的とした初期的な意向表明書を受領したとしている。最終的な意向表明に至る「蓋然性は高い」(宮崎氏)として、それらとの比較検討の時間を確保するため、同年5月8日以前にニデックがTOBを開始した場合、ニデックと一般株主との間で条件の異なる新株予約権を無償割り当てする対抗策も導入した。
宮崎氏は「株主に買収提案への是非を判断いただくために相応の時間を確保する必要があると考えている。ニデック以外の第三者から、ニデックの提案より良い条件が出せる可能性があるという初期的な買収提案を複数受領している。ニデックの提案に対して、明確な価格、内容が加味されてくると考えている。ニデックとのシナジー、ディスシナジーについても懸念を払拭できるような提案をお願いしている」と語った。ただ、対抗提案の具体的な内容については「ホワイトナイト候補が資金調達含めて検討中であり、どのような最終提案になるのかは未定だ」とした。
これまで牧野フライスとニデックは2回の面談、3回の質問状のやりとりを行った。宮崎氏は「ニデックによる買収によって生じるシナジーは明確ではない一方で、ディスシナジーが生じる具体的懸念が存在することから、当社の企業価値および株主の皆さまの共同の利益に資するとの確信を抱くには至っていない」と話した。
今回のTOBではニデックが事前に牧野フライスと協議をせずに予告したことも焦点の1つとなった。ニデックがTOBの開始予告を発表した2024年12月27日早朝に、ニデック 機械事業本部長の西本達也氏から宮崎氏に「新聞発表の前に連絡したかった」と直接電話があったことも明かした。宮崎氏は「(事前協議なきTOBは)手法としてはあり得るものだ。今回は、事前に打診がないという手法に鑑みて、反対の表明になったわけではなく、TOBの予告が2024年の最終営業日だったこともあり、しっかりと時間をいただきたいという趣旨だ」と述べた。
ニデックは、経済産業省が発表した「企業買収における行動指針」を引き合いに出し、「真摯な買収提案に真摯な検討」を牧野フライスに求めている。それに関しても宮崎氏は「”真摯な提案”に対して、ただただ、真摯に検討するための時間が欲しいということだ」と繰り返した。
牧野フライスが導入した対抗策は、2025年6月26日を新株予約権の無償割当ての基準日と定め、同日の最終の株主名簿に記載または記録された株主をもって、本新株予約権の無償割当てを受ける株主と定める。この対抗策は同年6月に開催予定の同社の株主総会において、対抗策の発動が可決された場合に実施される。
宮崎氏は、仮にニデックがTOBの期間を延長し、結果的に比較検討の時間が確保された場合は、対抗策を撤回するとの意向も会見では示した。
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