本連載では、ソフトウェアデファインドオートメーションおよびソフトウェアデファインドマニュファクチャリングのトレンド、方向性と実現に向けた要点について、多くの製造領域のリーダーやテクノロジープレイヤーとの議論を通じた筆者の考えを述べる。今回は、ソフトウェアデファインドの概要を説明しながら、モノづくりにおいてソフトウェアデファインドが必要とされる背景を考える。
ここ1〜2年、急速に「ソフトウェアデファインドオートメーション(SDA)」というキーワードが産業界で使われるようになってきた。
特に2025年は、フィジカルAI(人工知能)というキーワードの登場とともに、「ソフトウェアデファインドマニュファクチャリング(SDM)」の概念も議論されるようになり、テクノロジー領域の新ソリューションコンセプトにこれらのキーワードが冠されるようになってきた。
これらは工場や製造に関わる多くの方々に知っていただきたい、真のスマートファクトリー化への変革に向けた大きな潮流であるといえる。そこで本連載では、そのトレンドや方向性と実現に向けた要点について、多くの製造領域のリーダーやテクノロジープレイヤーとの議論を通じた筆者の考えを述べる。今回は、ソフトウェアデファインドの概要を説明しながら、モノづくりにおいてソフトウェアデファインドが必要とされる背景を考える。
製造領域にまつわるさまざまなデジタル化のキーワードや取り組みを体系的に捉える1つの枠組みとして理解していただければ幸いである。
ソフトウェアデファインドとは、サーバやネットワーク、ストレージなどのハードウェア資源を仮想化技術によって抽象化し、コンピュータリソースをソフトウェアから制御、運用する考え方である。
2010年ごろからIT領域で本格的に普及し始めたこの仕組みは、専用機器による機能実現から脱却し、汎用的なハードウェアと柔軟なソフトウェア制御を組み合わせることで、安価かつ高度なITインフラの構築/運用を可能にしてきた。
例えば、ソフトウェアデファインドネットワーキング(SDN)やソフトウェアデファインドストレージ(SDS)では、機器ごとに設定していた機能を一元化し、運用や拡張をソフトウェアで迅速に行うことができる。
このコンセプトは、近年自動車分野にも拡大している。ソフトウェアデファインドビークル(SDV)では、従来機械的に実現されていた機能を電子化(バイワイヤ技術)し、さらにソフトウェアによって多様で高度な制御を実現している。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)化に伴い、車両の先進安全支援やエンターテインメント機能は、ソフトウェアネットワークを通じて遠隔アップデート(OTA)される。SDVの開発/検証では、実車による試験だけでなく、AIやデジタルツイン環境を活用して膨大なシミュレーションをし、ソフトウェア品質や安全性を飛躍的に高めている。
ソフトウェアデファインドは大きく分けて2つの側面から、モノづくりに変革をもたらすものと考える。
1つは、IT分野で培われたオープン化、仮想化によるハードウェア非依存のアーキテクチャを実現し、システム設計/運用/保守を柔軟かつスケーラブルにするという側面である。これは、ソフトウェアデファインドオートメーション(SDA)として、工場や生産現場の制御をソフトウェア主導で管理し、OTAのようにネットワークを通じて設備/機器の機能追加や更新を容易にする基盤となるという点である。
もう1つは、モノづくり活動全体のモデル化による活動、意思決定のスピードアップである。SDVのように、製品や製造プロセス全体をデジタル上で設計し、多様なケースに対するシミュレーションをしたり、意思決定やオペレーションを仮想空間(デジタルツイン、メタバース)でAIと連携して行ったりすることで、現場の課題や変化に迅速、柔軟に対応しながら組織ナレッジが蓄積されていく、新たなモノづくりの基盤を構築できるという点である。
このように、ソフトウェアデファインドの思想は、ITインフラからモビリティ、製造業へと広がり、物理的制約から解放された柔軟なシステム設計/運用や、デジタルでの全体最適/イノベーションを後押しする基盤となっていくのではないだろうか。
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