「そのラダープログラム10年後も読めますか」――オムロンが描くAI活用FAインタビュー(1/2 ページ)

製造業で人手不足が進み、技能継承も難しさを増している。そうした中、オムロンは生成AIを活用して設計作業を効率化するクラウドサービス「OMRON Automation Teams(仮称)」を2026年度中に投入する計画だ。同社の狙いとロードマップを聞いた。

» 2026年03月04日 06時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 製造業において生成AI(人工知能)の活用は着々と広がっている。これまで高い専門性が求められたPLC(プログラマブルロジックコントローラー)の制御プログラミングにおいても、AIによるコードの生成などが可能になっている。FAメーカーは生成AIを用いたサービスの投入を図っており、オムロンではAIを用いて設計や検証、立ち上げの効率化を図るサービスプラットフォームとして「OMRON Automation Teams」(仮称)を2026年度中にも投入する予定だ。

 OMRON Automation Teamsで提供予定のサービスの中から、「IIFES 2025」では「設計情報活用AI」「STプログラム自動生成AI」「エンジニアリング支援AI」などを参考出展した。AIを活用する意義やサービスの概要、今後のロードマップなどをオムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 テクノロジーイノベーションセンタ センタ長の岸元武史氏、同 開発部長の島村純児氏、同 戦略推進部 主査の重森俊吾氏に聞いた。

AIで“記憶頼り”の流用設計から脱却

MONOist ラダープログラムを対象とした設計情報活用AIをはじめとするOMRON Automation Teamsの開発背景を教えてください。

重森氏 製造業の人手不足という課題と、われわれのPLC事業の成長を考えた時、まず設計というプロセスに着目して人手不足の課題解決に貢献するソリューションを出せないかと考えた。

 設計品質を上げるポイントの1つは、いかに過去のプログラム資産を流用できるかだ。過去のプログラム資産は既に長年設備を稼働させており、バグ出しもされて、ある程度の品質が担保されている。こうした資産の流用は、われわれの調べでは8割以上のケースに上る。

 この流用作業は、経験がありプログラムにも詳しいベテランのエンジニアにとっては問題のない作業だが、経験の浅いエンジニアがやると極端に効率が落ちてしまうという課題がある。その理由として、流用時にやらなければならない2つの作業がある。

 1つは膨大な過去のプログラムが収められたフォルダの中から、自分がやりたいことに近いプログラムを、大体どの辺りにあるのか当たりを付けて探す作業だ。これは、過去に手掛けたプログラムがどれだけ頭に入っているか、という“記憶”が頼りの世界となる。

 若いエンジニアなどは過去にどんなプログラムがあるのかをあまり知らないため、それを探す手掛かりが少ない。そのため現状はベテランエンジニアに“過去にこんなことをやっていませんか”と聞きに行っている状態だ。聞きに行く当てがなくなると、途端に作業効率が落ちてしまう。

 もう1つは、自分がやりたいことに近いプログラムが“このフォルダにある”ということが分かった後、そこに書かれたプログラムを読み、自分のやりたいことと照らし合わせる作業だ。これもプログラムを読むのに不慣れだと時間がかかってしまう。

 ベテランエンジニアは次々と引退が迫っているため、問題を放置しておくと過去の資産が使いにくくなったり、使えなくなったりしてしまう可能性がある。この記憶に頼った検索とコードの読み込みをAIで補うことで、流用作業の大きな効率化につながると考えた。

機械にできることは機械に、AIが得意なこともAIに

島村氏 オムロンの創業者である立石一真は「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」という理念を持っていた。

 先人たちが書いた過去のプログラムを読むという作業は非常に手間のかかる作業だ。そういった、過去の資産の中から必要な情報を得る作業は、人がやらなくても良いのではないか。むしろ、AIの方が膨大な情報処理が可能なため、AIに任せていいのではないかという発想だ。

設計情報活用AIの提供価値 設計情報活用AIの提供価値[クリックで拡大]出所:オムロン

重森氏 ST言語の自動生成では、ユーザーが自然言語でやりたいことを入力すると、それを実現するために必要な制御、つまり求められている内容や流れをAIが自然言語で出力する。それで問題なければ、必要な関連処理も含めてAIがST言語を出力する。

 設計時には、プログラミング以外にも、ネットワーク設定などやらないといけないことがたくさんあり、手間がかかっている。エンジニアリング支援AIは、それらを自然言語で指示すると、AIがツールを自動で立ち上げて、設定を反映させるというものだ。

島村氏 ラダープログラムの要約検索というのは、まさしく人手不足の中でベテランのリタイアが相次ぎ、暗黙知が継承されていないという課題に着目したもので、ST言語の自動生成とは若干アプローチが異なる。

 AIはハルシネーションを起こすため、100%正確なものは技術的に出力できないと認識している。また、プログラムを新規に作成するというのは、創造性が発揮できる領域でもあり、あくまでAIはユーザーのスキルをサポートする形になる。

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