「そのラダープログラム10年後も読めますか」――オムロンが描くAI活用FAインタビュー(2/2 ページ)

» 2026年03月04日 06時00分 公開
[長沢正博MONOist]
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中身を読まずに“近しい”セクションを抽出

MONOist 設計情報活用AIの具体的な使い方を教えてください。

重森氏 自分のやりたいこと、例えば「単軸ロボットの原点復帰」と入力すると、AIが検索した言葉の意味に近いセクション(プログラムを構築する基本的な単位)を抽出する。プロジェクト名とセクション名、そしてAIが生成したセクションの概要文が表示され、ユーザーは自分がやりたいものに近いものを選択すると、そのラダープログラムの概要文やコード、処理の流れなどがさらに表示される。選択したセクションが他にどんなプログラムと関連しているのかも相関図で可視化する。チャットアシスタントも実装予定だ。

 自分が思い付いた言葉から、プログラムの中身を一切読むことなく、探しているプログラムにたどり着けるようになる。

 ここでのAIの仕事はソースコードを読んで概要文を生成することだ。検索する時も、AIが生成したセクションの概要文から、検索した言葉と意味が近いものを探し出す。分かりやすくフローチャート化する。

 セキュリティの観点から、ユーザーにフォルダをどこかにアップロードしてもらうのではなく、われわれのシステムがPCや共有サーバにあるフォルダを読みに行く形にしている。作成した要約などは、キャッシュとしてユーザーのPCもしくは指定されたフォルダに残す。システムを使用する時は、AIがそのキャッシュを読みに行く。

 IIFES 2025では、現状のクオリティーでもいいので、すぐに導入したいという声をいただいた。われわれが考えていた、ベテランエンジニアの引退や流用設計時の手間などが、まさに現場が日々悩まれている課題であり、それらを直接的に解決するイメージを持っていただき、かなり好評だった。

設計情報活用AIの操作画面イメージ 設計情報活用AIの操作画面イメージ[クリックで拡大]出所:オムロン

島村氏 今回の特徴として、使用するLLM(大規模言語モデル)には一切学習をさせないようにしている。日本のユーザーはLLMに対して、データが漏れるのではないかという漠然とした不安がある。IIFESでも、自社のサーバで運用したいというお客さまが多かった。LLMに対する情報漏えいの懸念をできるだけなくすために、クラウドサーバに情報も残さない点にはこだわった。

京都に開発拠点開設、人材採用も加速

MONOist 各社がAIを活用したソリューションの開発に力を入れていますが、人的リソース面はどのように対応していますか。

岸元氏 オムロンのインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー(IAB)では長年、社会および顧客の課題と向き合いながら技術開発を行ってきた。近年は特に、製造業の深刻な人手不足や技能伝承の難しさが課題として顕在化しており、モノづくりの高度化はもはや“待ったなし”の状況だ。

 そうした製造業が直面する問題をオムロンの技術で解決を加速させるため、IABの商品事業本部の下にテクノロジーイノベーションセンタを2025年4月に設立した。テクノロジーイノベーションセンタではオムロンが従来、コア技術としてきた「センシング&コントロール+Think」をさらに進化させ、商品横断型の技術を高めていく。また、生成AIや仮想化、シミュレーション技術などをキャッチアップし、ソリューションとして創出する。こだわっているのは、顧客課題起点の技術開発だ。

 そして、技術開発を強力に進めていくため、2026年1月に京都本社(京都市下京区)にテクノロジーイノベーションセンタの開発センタを開設し、外部からの人材採用などを進めている。先進技術の開発にはパートナー企業と一緒になって、オープンイノベーションで取り組んでいくが、これまで積み重ねてきたセンシング&コントロール+Thinkといかにつなぎ合わせるかが重要になる。

 目的とするアウトプットを得るためにAIに何をインプットさせればいいか、どのように処理させればいいかがポイントになる。それらはわれわれがメインになりつつ、AIに知見のあるパートナー企業と話し合いながら、試行錯誤しつつ開発を進めている。

3つのフェーズで同時並行に開発を推進

MONOist 今後のロードマップを教えてください。

島村氏 設計情報活用AIは主要な要件についてはほぼ固まっており、自社工場で評価も実施している。今後、実際にユーザーの元で検証という形で使ってもらい、フィードバックを得ながらリリースを目指したい。

 全体としては3つのフェーズを考えている。ただ、フェーズ1、2、3は同時並行に進めていく。

 フェーズ1では、お客さまが持つ設計資産をデジタル化、あるいはAIを活用できる状態にする。また、AIはハルシネーションを起こすため、AIが生成したものを仮想的な環境で検証できるようにする。例えば、PLCを仮想化して、仮想空間上で動かせるようにする。

 フェーズ2では流用設計の自動化と統合仮想検証を目指す。例えば、仮想空間上で動くPLCに、AIが出力したデータを与えて、妥当性を検証できるようにする。フェーズ3は仮想ファクトリと自律制御化に取り組む。現場で起こることを仮想化し、仮想空間上で再現したり、検証したりできるようにする。

 われわれは従来、自社開発や技術の内製化に注力してきたが、AIや仮想化、シミュレーションの世界は技術の進歩がとても速い。そこで自社開発にこだわると、開発が間に合わなかったり、技術に取り残される可能性もある。

 そのためわれわれが得意とする技術領域と、そうではない技術領域で分けて、得意ではない領域や進歩が速い領域に関してはできるだけ外部のパートナー企業と協力して開発する。STプログラム自動生成AIでは、Laboro.AIと協力した。設計情報活用AIについても別のパートナー企業と取り組んでいる。

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