これからのPLC〜「PLC Anywhere」の時代へ〜PLCの現在 過去 未来(3)(1/2 ページ)

本連載では、34年間PLCと共に歩んできた筆者の視点から、全3回にわたって今、PLCが迎えている重要な転換期を読み解きます。最終回となる今回は、次世代のPLC像を「PLC Anywhere」というコンセプトで描き出し、その実現に向けた道筋を探ります。

» 2025年10月09日 08時00分 公開
[岡実MONOist]

はじめに:現場の声が示した、進化の“必然性”

 本連載では、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)が製造現場の「共通基盤」へと進化してきた歴史を(前編)、そしてその基盤の上で現場が直面している「3つの壁」と未来への具体的な「期待」を(アンケート編)、皆さんと一緒に見てきました。

 アンケートで寄せられた130人の声からは、PLCが次のステージへ進化していくことへの大きな期待、いわば「進化の必然性」が伝わってきました。そして、現場が望む未来は、単純な性能、機能の向上ではありませんでした。

 最終回となる本稿では、これらの声から導き出される次世代のPLC像を「PLC Anywhere」というコンセプトで描き出し、その実現に向けた道筋を探っていきます。

⇒連載「PLCの過去 現在 未来」のバックナンバーはこちら

浮かび上がった「PLCの再定義」というテーマ

 アンケートから見えてきたのは、PLCが応えるべき、2つの大切な期待でした。1つ目は、「絶対的な信頼性」、そして2つ目は、「ITのような柔軟性やオープンさ」を期待する声です。

 この「堅牢なハードウェアであれ」という要求と「柔軟なソフトウェアであれ」という要求は、従来のPLCの姿のままでは、なかなか両立が難しいでしょう。この両立の難しさを乗り越えるには、少し発想の転換が必要なのかもしれません。

 つまり、PLCを「制御盤に収める特定のハードウェア(モノ)」としてだけ捉えるのではなく、「リアルタイム制御をつかさどる“機能”」として再定義してみるのです。アンケートで語られた「IPCとの適材適所」という考え方は、現場が既に無意識にこうした捉え方がされていることの表れかもしれません。

 PLCを“機能”として捉え直したとき、初めて「その機能を、最適な場所で、最適な形で使えば良い」という新しい未来像が見えてきます。それが、本稿で提案する「PLC Anywhere」という考え方です。

未来像「PLC Anywhere」とは? 〜どこでも使えるPLCへ

 「PLC Anywhere」とは、その名の通り、PLCという“機能”がどこでも使えるようになる世界です。PLCの頭脳(制御ロジック)が特定のハードウェアから解き放たれ、さまざまな場所で実行可能になる姿をイメージしてみてください。

1. 現場(エッジ)のPLC

 まず、従来の堅牢なハードウェアPLCは、よりインテリジェントになりながら、もちろん現場にあり続けます。これに加えて、PLCの本質的な価値である「確実なリアルタイム制御」が、独立した箱としてだけでなく、ロボットや画像センサー、工作機械といった現場を支えるデバイスの一部に同居する形も増えていくでしょう。

2. クラウド上のPLC

 PLCの機能がクラウド上に存在することで、大規模なシミュレーションや、複数拠点の設備を遠隔で監視、管理するといった、ITの世界と深く融合した使い方が可能になってきます。この分野は既に一部のメーカーが取り組みを始めています。

3. PC/IPC上のPLC

 ソフトウェアPLCとしてPCやIPC上で動作させることで、高速な情報処理やAI、画像処理といったPCの得意技と、PLCの得意技であるリアルタイム制御を1台で両立できます。アンケートにあった「IPCとの共存」の、1つの具体的な形と言えます。

4. 机上(バーチャル)のPLC

 エンジニアのPC上で動く仮想PLCです。これにより、実機を使わずにプログラミング教育を行ったり、事前にデバッグやシステムの検証をしたりすることが可能になります。

PLC Anywhere 4つの形態 PLC Anywhere 4つの形態[クリックで拡大]
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