ヒューマノイドロボットがいよいよ現場に? 山善が物流現場での試験導入を公開サービスロボット(1/2 ページ)

山善が、物流現場の人手不足解消に向け、ヒューマノイドロボットの本格試験導入を公開。デモでは初見の商品も難なくピックした。今後は「フィジカルデータ生成センター」を核に学習データを量産し、2026年度内の本格導入を目指す。

» 2025年11月10日 06時00分 公開
[安藤照乃MONOist]

 山善は2025年10月30日、INSOL-HIGH、センコーグループの東京納品代行と共同で、物流現場におけるヒューマノイドロボットの本格導入に向けた試験導入に関する記者説明会を開催した。会場では、ヒューマノイドロボットが実際に作業を行うデモンストレーションも報道陣に公開した。

動画 ヒューマノイドロボットによる作業デモンストレーション。頭部、右手、左手に搭載された合計3基のカメラを使用し、対象物の形状や重さなどを予測しながら、次々と商品を移し替えた。[クリックで再生]
山善の北野峰陽氏 山善の北野峰陽氏

 説明会の冒頭、山善のヒューマノイドロボット市場開発担当課長である北野峰陽氏は、今回の試験導入の背景を説明した。

 物流業界や製造業では、恒常的な人手不足という大きな課題を抱えており、AI(人工知能)やロボティクス技術を活用した自動化需要が急速に拡大している。しかし、現在のロボットシステムは搬送やピッキングに特化した単機能型が主流で、作業効率が高い反面、どうしても人間が介在しなければならない作業領域が多く残されてきた。そこで山善が着目したのが、ヒューマノイドロボットである。

 北野氏は、「ヒューマノイドロボットは単機能型ロボットと比較すると、複雑かつ複数の作業を汎用(はんよう)的に対応できる。また、自動倉庫やAGVなどの他システムとの親和性も高いため、人手作業の現場に活用しやすい」とその特徴を述べた。

 ヒューマノイドロボットの特徴 ヒューマノイドロボットの特徴[クリックで拡大]出所:山善

 山善は2025年4月にINSOL-HIGHと業務提携を締結し、ヒューマノイドロボットの社会実装に向けた共同プロジェクトを開始した。山善の自動化ノウハウ、販売ネットワークと、INSOL-HIGHのロボット技術を融合し、2026年以降に全国の製造/物流現場への本格導入を目指す。

 本格導入に向けて検証の場を探していた山善は、取引関係にあった東京納品代行に協力を依頼。東京納品代行が実証フィールドを提供することで、実際の物流現場におけるヒューマノイドロボットの試験導入が実現した。

「初見の商品」もピッキング可能、高い汎用性を示す

 試験導入したのは、東京納品代行が運営する東京ベイ・ファッションアリーナ(千葉県市川市)だ。2013年10月にオープンした物流センターで、アパレルや百貨店の製品を主に取り扱っている。

 今回の実証でロボットに与えられたタスクは、自動倉庫から搬送されてきたケースの中の商品(ぬいぐるみ)を認識してつかみ、別の折り畳みコンテナ(オリコン)へ移し替えるという「ピックアンドドロップ」の作業である。

 2025年10月30日時点での成果としては、ピックアンドドロップの成功率が97%(5回以下のリトライ含む)、10個の商品を移し替える平均タクトタイムが131.0秒だった。作業スピードとしては人間には劣るが、夜間など人が作業しない時間帯に稼働させることで、現場の支援を図りたい考えだ。

実証で使用したヒューマノイドロボット 実証で使用したヒューマノイドロボット[クリックで拡大]

 今回使用したロボットは、中国のAGI BOTのヒューマノイドロボットだ。山善の北野氏によれば「日本企業として初めて導入した」という。すでにAGI BOTが学習データのプラットフォームを保有しており、そのデータと機体がセットで導入できることから採用に至った。

  特筆すべきはヒューマノイドロボットの汎用性だ。デモンストレーションでは、学習データには含まれていない商品も混ざっていたが、正確に認識して作業を成功させた。また、報道関係者の持ち物(腕章)を対象としたピッキングにも挑み、問題なくオリコンへ移し替えることができた。

(左)完全に初見の物体が置かれたが…(右)1度目でクリアした[クリックで拡大]
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