DMG森精機と東大がMXセンターを設立、森氏は“機上計測”に関心工作機械

DMG森精機と東京大学は、工作機械を中心とした製造技術の革新に向けた産学連携拠点「マシニング・トランスフォーメーション研究センター(MXセンター)」を設立する。加工現象の可視化やモデル化を進め、工作機械の高度化を目指す。

» 2026年03月10日 07時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 DMG森精機と東京大学は2026年3月9日、同大学の安田講堂で記者会見を開き、製造業の持続的発展と課題解決に取り組む「マシニング・トランスフォーメーション研究センター(MXセンター)」を同年4月1日付で開設することを発表した。

エンダウメント型研究組織として運営、長期視点で製造技術革新

 DMG森精機が掲げるMXは、5軸加工機と複合加工機を活用した工程集約や自動化の推進により、GX(グリーントランスフォーメーション)を実現し、さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて生産工程を革新する取り組みだ。MXによって現在、世界中で稼働する約500万台の工作機械を、2050年までに100万台程度に集約できるとしている。

 MXセンターは東京大学大学院 工学研究科内に設立される。MXの考え方を基盤に、工作機械の価値を将来にわたり高める研究を行い、技術革新を生み出す。DMG森精機からの10億円の寄付を原資として、東京大学基金内に設置される「マシニングトランスフォーメーション研究センター基金」を活用し、運用益などを財源として長期にわたり安定的に運営するエンダウメント型研究組織として設計されている。

東京大学 総長の藤井輝夫氏 東京大学 総長の藤井輝夫氏

 東京大学 総長の藤井輝夫氏は「次世代の研究者が独立して自由な発想で個性的な研究を進めていく環境を担保するため自らの裁量で長期に安定的に使うことができる基金であるエンダウメントの拡大に取り組んでいる。日本の製造業には国際競争力の低下、人材不足、エネルギーの制約、環境負荷の増大といった次世代にわたって取り組むべきさまざまな課題がある。MXセンターではDMG森精機を含む学内外の多様な領域の機関と連携する。先端的なマシニング技術を駆使することにより、製造業の革新を目指す」と語った。

 DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏は「われわれのエンジニアが今、修理しているのは既に20〜30年使われている機械であり、今納めている機械も今後20〜30年は使われていく。つまり工作機械産業は、前後で見れば50年近いスパンで動いていることになる。その中で工作機械メーカーは3〜5年のスパンで研究開発し、製品化している。われわれではなかなか難しい5〜20年先に使えるような技術をしっかりと腰を据えて大学と研究できると期待している。今後AI(人工知能)が発展するにつれて、膨大なデータに基づいてAIが非常に複雑な制御を導き出す。そして制御が複雑になるほど、制御される対象物はより緻密に動かなければならない。AIを活用した高度な制御にしっかりと応えられる工作機械が求められている」と話した。

 MXセンターでは切削、研削、積層造形(Additive Manufacturing、AM)などの加工プロセスを対象に、加工現象の可視化、モデル化を進めるとともに、工作機械、加工システム全体の高度化、デジタル技術を活用した設計、制御、運用の高度化に取り組む。具体的には、大型放射光施設「SPring-8」での高速X線撮像による加工点の可視化、積層造形における高速度観察を用いた機械特性の予測や天面画像を用いた内部構造予測、大規模機上計測とマルチモーダル誤差補正などに取り組む。

DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏 DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏

 森氏は「計測の新しいスタンダードを作っていただければありがたい。そのための機械の改造にはいくらでも協力する。これまで工作機械は機械工学や電気工学、ソフトウェア工学の3つで進化してきた。今、ソフトウェアにはAIが加わり、付加加工の物性はこれまでと異なる。もはや一民間企業ではできないことがたくさんある。そこで大学にはわれわれが知りえなかった文献や事例、他企業との橋渡しの役割などを期待している」と期待した。

 MXセンターのセンター長を務める東京大学大学院 工学研究科 教授の杉田直彦氏は「今、日本の大学では生産技術の研究室がどんどん減っている。MXセンターがあれば、期限を気にせず、工作機械の研究を未来永劫続けられる。運用益によって正規の教員も雇えるので、工作機械の研究室を存続できる。スタート当初は、DMG森精機の中で解決できないテーマ、研究課題を持ち寄ってもらい、われわれの教員や研究テーマとマッチングしていきたい。センターの活動を軌道に乗せた後、より長期的なテーマも模索したい」と話した。

MXセンターでの研究テーマを話す杉田氏(中央)。後列はDMG森精機 執行役員 先端技術研究所担当の入野成弘氏(左)と、同 AM統括担当の廣野陽子氏(右)[クリックで拡大]

⇒その他の「工作機械」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR