加工プロセスのデジタルツイン化、工作機械で進むデータ活用EMOハノーバー2025

工作機械において、機械から生まれるさまざまなデータを活用した取り組みが進んでいる。ドイツ企業が提供するソリューションを紹介する。

» 2025年10月20日 07時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 産業界ではデータの利活用による生産性向上が潮流となっている。工作機械においても、機械から生まれるさまざまなデータを活用した取り組みが進んでいる。

加工中のデータからワークモデルを生成

 ドイツのgemineersでは、デジタルツイン技術による加工プロセスのモニタリングが可能になるソフトウェアを提供している。2021年設立のgemineersは、欧州有数の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構発のスタートアップ企業だ。社名は、ラテン語で双子を意味するgeminiとengineer(エンジニア)を組み合わせた造語となっている。

 gemineersのソフトウェアは、加工中の工作機械の座標系や温度、振動、モータにかかる負荷などのデータを収集し、ワークの3次元モデルを描くことができる。CADの設計データを基にCAMで加工プログラムを作成できるが、実際の加工プロセスでは事前のプログラムとずれが生じることがある。gemineersのソフトウェアでは、加工中のデータを基にした3次元モデルと、設計段階の3DCADモデルを比較し、生じた差異を色で表すこともできる。形状精度だけでなく、そこに至るまでの加工プロセスもモニタリングできるのが特徴だ。最終製品のトレーサビリティーや不具合発生時の原因特定にも活用可能だ。

gemineersでは加工プロセスのモニタリングソフトウェアを提供している gemineersでは加工プロセスのモニタリングソフトウェアを提供している[クリックで拡大]出所:gemineers

 従来は、ソフトウェアをインストールするIPC(産業用PC)などが必要だったが、欧州最大級の工作機械展示会「EMO Hannover 2025」(2025年9月22日〜26日:現地時間、ドイツ・ハノーバー)では、DMG森精機の操作盤に搭載されたソフトウェア「CELOS X」にgemineersのアプリケーションをダウンロードすることで、ハードウェアを追加することなく利用できるようなった点を訴求した。

 DMG森精機 執行役員 商品統括担当で、DMG森精機と野村総合研究所の合弁会社テクニウムの代表取締役社長を務めるブルーメンシュテンゲル健太郎氏は「gemineersのソフトウェアは加工のドライブレコーダーのようなものだ。ただし、自動車のドライブレコーダーよりはるかに多くのデータを記録することができる」と語る。

 工作機械の回転工具ホルダーなどを開発、製造するドイツのWTOは「EMO Hannover 2025」において、次世代の回転工具ホルダーとして「QuickFlex smart」をアピールした。QuickFlex smartでは搭載しているセンサーが工具の回転速度や振動、温度、稼働時間をモニタリングし、Bluetoothでリアルタイムに送信する。遠隔地からもモニタリングのデータは確認できる。「自動化が進んだ加工セルでは、オペレーターが自ら工具ホルダーを監視するのは不可能だ。そのためQuickFlex smartのような自動化のソリューションが必要になる」(WTOの説明員)

WTOの回転工具ホルダー「QuickFlex smart」(左)、データを送信する基板が埋め込まれている(右)[クリックで拡大]

 gemineersとWTOは共にDMG森精機のDMQP(DMG MORI Qualified Products:DMG森精機認定周辺機器)認定パートナーになっている。DMQPは、DMG森精機の工作機械の立ち上げに必要な周辺機器や素材、切削工具などの消耗品において、品質、性能、保守性に優れた製品として同社が認定したものだ。2024年12月からユーザー向けの会員サイト「my DMG MORI」のeMarketから注文可能となった。eMarketでは、600万点以上のラインアップを取りそろえているという。

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