出口は見えたか、DMG森精機担当役員が語る欧州市場の行方と工作機械の将来EMOハノーバー2025(1/2 ページ)

DMG森精機 執行役員 DMG MORI EMEA North担当 兼 Chief Sales and Service Officerのハラルド・ノイン(Harald Neun)氏が欧州最大級の工作機械展示会「EMO Hannover 2025」の会場で合同取材に応じ、欧州の工作機械市場の景況感や自動化の動向などについて語った。

» 2025年10月06日 06時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 欧州の工作機械市場が長いトンネルを抜け出せないでいる。背景には、ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の高騰や自動車産業の構造変化など、さまざまな要因がある。

 欧州最大級の工作機械展示会「EMO Hannover 2025」(2025年9月22〜26日:現地時間、ドイツ・ハノーバー)の会場で、DMG森精機 執行役員 DMG MORI EMEA North担当 兼 Chief Sales and Service Officerのハラルド・ノイン(Harald Neun)氏が合同取材に応じ、欧州の工作機械市場の景況感や自動化の動向などについて語った。

欧州で重要性が高まる航空宇宙産業と防衛産業

―― 欧州の市況について教えてください。

DMG森精機 執行役員のハラルド・ノイン氏

ノイン氏 残念だが、ドイツの工作機械市場は低迷している。主な原因は、基幹産業である自動車産業の停滞だ。一般機械の市場も緊張感が高まっている。ただ、全体の受注における自動車産業の割合は徐々に減少しており、われわれ自身は大きな影響を受けていない。

 自動車産業では、多品種小ロット生産が広がっている。われわれにも柔軟な自動化ソリューションの提供が求められている。かつては、生産効率を最大限に高めるために、1つの生産ラインで1種類の製品を作っていたが、今は1つのラインでさまざまな製品が作れる柔軟性が重要なカギになっている。

 スウェーデンやノルウェーなどの北欧は活況だ。ノルウェーはエネルギー産業向けに大型加工機、スウェーデンでは航空宇宙産業向けに5軸加工機の引き合いが多い。イタリアも航空宇宙産業、防衛産業が盛り上がっており、欧州全体でも航空宇宙産業と防衛産業の重要性が増している。

 問題は、米国の相互関税によって市場の不透明感が増していることだ。例えばスイスは米国向けの輸出が大きな割合を占めているが、EU(欧州連合)に所属しておらず、米国に課された高い関税が悪影響を及ぼしている。

 工作機械の購入は大きな投資でもあり、将来への信頼性、安定性が不可欠だ。それが相互関税によって崩れている。ただ、米国内にはわれわれのレベルの工作機械を提供できるメーカーがなく、米国のユーザーは輸入せざるを得ない。その際に、関税を支払うのはユーザー側になるため、われわれにとっては大きな影響はない。

工作機械メーカーからソリューションプロバイダーへ

―― EMO Hannover 2025で伝えたかったものは何でしょうか。

ノイン氏 EMO Hannoverは、世界最大級の工作機械の展示会の1つであり、われわれにとって特別な展示会だ。工作機械市場にどんなイノベーションを用意しているかを見せる場であり、DMG森精機は革新的な技術で市場をけん引し、将来にわたって信頼できるパートナーであることを示す場でもある。

EMO Hannover 2025ではホール1つが丸ごとDMG森精機のブースとなった EMO Hannover 2025ではホール1つが丸ごとDMG森精機のブースとなった[クリックで拡大]

 われわれは、ただ単に工作機械を販売するのではなく、包括的なソリューションプロバイダーやコンサルタントになることを目指している。今回、ブースでは5つの産業ごとにソリューションを紹介しているが、DMG森精機にはそれらの産業出身のメンバーもいて、彼らはそれぞれの産業で今、何が求められているのかを理解しており、産業固有のニーズに沿った提案が可能になっている。

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