ダイフクは「SEMICON Japan 2025」で、半導体後工程向けの自動搬送システムを展示した。自社のOHTと他社製ロボットを連携させ、効率的な工程間搬送を実現。2030年の売上高1兆円達成に向け、新興国市場への参入を加速する。
ダイフクは「SEMICON Japan 2025」(2025年12月17〜19日、東京ビッグサイト)に出展し、同社の天井走行式無人搬送車(OHT)と協業企業の自律搬送ロボット(AMR)を連携させた、半導体後工程向けの自動搬送システムをコンセプト展示した。同社クリーンルーム事業部は、従来の自前主義にとらわれないパートナー協業戦略を打ち出し、拡大する東南アジア市場などでの自動化ニーズ取り込みを加速させる。
ブースで披露したのは、ダイフクの後工程向けOHT「CLW-08K」(最大可搬重量14kg、最大走行速度は分速200m)と、台湾のGyro Systemsの移載機付きAMRを組み合わせたデモンストレーションだ。従来、OHTからの荷降ろしは、固定されたポートを経由するのが一般的だ。今回のデモンストレーションでは、CLW-08Kがベルト駆動で荷物を降ろし、AMRへ直接積載する様子を披露した。
これにより、固定ポートへの経由が不要となり、AMRは荷受け後すぐに次の工程へと移動できる。半導体製造の工程間のリードタイム短縮に加え、設備削減による省スペース化の実現を目指す。デモンストレーションのように具体的な製品を組み合わせた上での納入予定は未定だが、ダイフクは国内外の顧客に向けて、連携コンセプトも含め、積極的に自律搬送ロボットも提案していく方針だ。
ダイフクが今回、このようなシステム構成を提案した背景には、半導体製造プロセスの特性と市場の変化がある。
シリコンウエハー上に回路を形成する「前工程」は、SEMI規格によりウエハーサイズなどが標準化されており、OHTなどを活用した大規模な自動化が既に定着している。一方、チップの切り出しや配線などを行う「後工程」は、顧客や製品ごとに仕様がバラバラであり標準化が難しいため、人手による搬送が多く残っている。
また近年、半導体製造は東南アジアなどの新興地域へも拡大している。しかしこうした地域では初期投資を抑えた小規模な自動化からスタートする傾向が強い。ダイフクが得意とする大規模OHTシステムは、導入コストや工期の面でハードルが高く、これら新規層へのリーチが課題となっていた。
そこで同社は後工程の自動化ニーズに応えるため、クリーンルーム向けAMRなどを自社開発するのではなく、既にノウハウを持つ外部パートナーとの協業を選択。3〜4年前からパートナー開拓を進め、現在はGyro Systemsや中国のYouibot Roboticsなど複数社と協業関係にある。
「原則として自社製品の提供を主軸としているが、半導体製造の国産化や新規参入といった市場の潮流を踏まえ、パートナー企業との協業も柔軟に進めていく。工程全体の自動化を通じ、お客様の生産性向上に貢献したい」(ダイフク クリーンルーム事業部エンジニアリング部 SEグループの藤原遥介氏)
まずはスモールスタートでの自動化導入を支援し、将来的には同社が得意とする大規模な自動搬送システムの提案へとつなげる、段階的な拡張戦略を描く。
ダイフクは2030年までの長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」で連結売上高1兆円達成を掲げている。直近の2024年12月期決算においては、中国におけるレガシー半導体投資が高水準で継続すると同時に、生成AI向け半導体の需要が急増し、先端半導体投資が前倒しで好調となった。事業売上高を拡大させているクリーンルーム事業において、新興国市場への参入や、複雑化する後工程半導体パッケージ技術に必要な搬送システムの提供を加速させる。
また、2026年1月1日付で現在のダイフク 代表取締役社長(CEO)の下代博氏から社長を交代し、代表取締役副社長(COO) クリーンルーム事業部門長の寺井友章氏が代表取締役社長(CEO兼COO)に昇格する。クリーンルーム事業でキャリアを積み重ねてきた寺井氏が就任し、現場を知る新トップの下で後工程の複雑なニーズに応え、2030年の目標達成に向けたスタートダッシュを切る。
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