牧野フライス製作所へのTOBを開始したニデックが、傘下の工作機械メーカーのトップとともに記者会見に臨み、牧野フライス製作所へのメッセージなどを語った。
ニデックは2025年4月4日、東京都内で記者会見を開き、同日開始した牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)へのTOB(株式公開買い付け)について説明した。これまでに買収したニデックオーケーケー(旧OKK)、ニデックマシンツール(旧三菱重工工作機械)、TAKISAWAの経営幹部も出席し、ニデックグループ入り後の変化や牧野フライスへのメッセージなどを語った。発言の内容を中心に紹介する。
ニデックは2024年12月27日、事前の協議をすることなく、牧野フライスに対して完全子会社化を目的として、2025年4月4日からTOBを開始すると発表した。買い付け価格は1万1000円、議決権ベースで50%超の取得を目指すとした。その後、TOBを巡って両社は2回の面談、3回の公開質問状のやりとりを行った。
牧野フライスは「あらゆる戦略的オプション」を検討するため、ニデックに対してTOBの2025年5月9日以降への延期や、買い付け下限数を議決権ベースの3分の2へと引き上げることを再三、要請していた。また、複数の第三者から完全子会社化を目的とした「初期的な意向表明書を受領した」(牧野フライス)としている。
直近では、ニデックが2025年5月9日以前にTOBを開始した場合、一般株主とニデックで条件の異なる新株予約権を無償割り当てする対抗策の導入を発表したが、ニデックは当初の予定通り、2025年4月4日に牧野フライスに対してTOBを開始した。
2023年にニデックグループ入りしたが、ニデックの提案当初は、取締役の一部に否定的な意見、考えがあったのは事実だ。しかし、取締役会として意見を表明する義務があると考え、役員全員がニデックと計6回の面談に臨み、質疑応答を重ね、本当に議論を尽くした。
これらの面談は、取締役それぞれにとって非常に意義があった。これがあったからこそ、社内でも議論を尽くすことができ、結果として、賛同の意見を表明した。
2023年度は利益が0に近い状態だったが、2024年度は二桁億円の利益が出ている。従業員は大変忙しくしており、年収も上がり、有給休暇の取得率は80%を維持している。「忙しくなってよかったね」という声をかけてきたサプライヤーもいる。
PMIについては、ニデックグループ入りが決まった2023年11月1日に、永守(永守重信氏、ニデック グローバルグループ代表)が来て、TAKISAWAの作業服を着て、全社員の前で「この会社は絶対によくなる。今日初めて会った私を信用してくれとは言わないが、だまされたと思って言う通りにやってくれ」と伝えた。これは社員にとって、将来に対して夢を持った瞬間だと考えている。
2025年11月は5回、12月は2回、永守は来社して朝から夕方まで、1日かけて、営業やサービス、開発、設計、製造、購買、総務、労働組合と対話をして、それぞれの役割や方向性について議論した。昼食も参加者と一緒に食べ、食事中も対話に応じた。
2024年に入ってからは1~9月まで月1回、永守が訪れ、経営会議として朝から夕方まで、さまざまな報告を聞いて、それに対して意見を述べていた。これまでに16回来社している。(ディスシナジーについて)ニデックの競合となる減速機メーカーの1社が取引を止めることになったが、ニデックのグループ企業からそれを上回る受注が来ている。
会社として利益を出し、さらにその上を目指して継続するということが一番だと考えている。利益が回復して本当に良かった。
ニデックグループ入りする数年前から業績が悪化していた。会計問題も起こして危機的な状況だった2021年に社長に就任した。どうやって廃業しようか、またはどうすれば上手に着地できるか、そんなことばかりを考えていた。
そんな時にニデックから「経営がうまくなかっただけで、悪いものを作っているわけではない。お客さまもいる。一緒に日本一の工作機械メーカーを目指さないか」と声をかけられた。私にとっては天使が降りてきたような、目の前が広がっていくような感じになり、その話に飛びついた。実際に、ニデックグループ入りして、会社を、従業員の生活を守ることができた。
PMIでは、永守は潰れかけた会社に「一緒に日本一になろう。上を目指そう」と夢を語って、皆が勇気付けられた。全従業員を集めて講話もしてもらった。講話が終わると、「聞きたいことに全て答える」といって質疑応答もした。
最初は皆、遠慮していた。サクラも入れたが、次々と自主的に手が挙がるようになって、順番待ちになった。1時間30分くらい質問に応じて、打ち解けた対話ができるようになった。それを機に、多くの従業員の目の色が変わった。そしてずっと赤字体質だった会社が黒字転換をした。
いろんなことをした。伊丹市にあった工場の移転に関しても、ニデックグループ入り後に、建て替えなども1年以上かけて検討した。ただ、周囲は住宅に囲まれている。今後の成長を考えた時にニデックマシンツールと工場も一緒にできるのなら、そこに移転した方が会社は成長する。成長を続けることで、社員の生活も向上させることができる。モノづくりに欠かせない工作機械が強くなり、日本の国力も上がると考えた。
工作機械を作っている以上、顧客目線になる。工作機械は、ユーザーが利益を出すための道具であり、そこに寄り添うのは工作機械メーカーの使命だ。そこはどのメーカーも一緒だ。
牧野フライスは豊富なノウハウを持つ大きな会社であり、ぜひニデックの工作機械事業のリーダーとなっていただき、一緒にいろいろなシナジーを出しながら成長していきたい。
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