パナソニックのベトナムにおける配線器具事業の成長を支える、パナソニックエレクトリックワークスのベトナム工場におけるモノづくりをレポートする。
住宅やオフィスには必ず存在するスイッチやコンセント。パナソニックエレクトリックワークスはそれら配線器具事業において、日本だけでなく、海外においても高いシェアを持つ。その1つがベトナム。そして、ベトナムにおけるパナソニックの配線器具事業の成長を支えているのが、2014年から操業しているパナソニックエレクトリックワークスの現地工場だ。ベトナムにおけるモノづくりの模様をレポートする。
パナソニックはベトナムで1994年から配線器具の販売を始めた。当初は日本またはタイで生産された製品を輸入していたが、2011年にタイで大洪水が発生し、タイの工場が浸水して稼働停止に至ったことから、BCP(事業継続計画)対策でベトナムに製造拠点の設立が決まった。タイでの生産は現在も行われており、配線器具の生産能力は月1000万個で、2600品番を扱っている。
ベトナム工場の2023年の生産実績は、ベトナム国内向けのスイッチやコンセントなどの配線器具が67%、ベトナムやタイ、日本向けのブレーカーが33%となっている。出荷先別販売比率は、ベトナムが79%、日本が17%、タイが5%だった。
操業開始当初は工場の建屋面積は約9300m2だったが、ベトナム市場の拡大とともに工場も2017年に増築して建屋面積を8000m2増床、2024年には3階建てで建屋面積1万940m2の第二生産棟が稼働し、建屋面積は合計で約2万8000m2まで拡大している。それに伴って、配線器具の生産数は操業当初から4倍に伸びている。
従業員は約1000人が働く。コロナ禍では、従業員が工場敷地内に寝泊まりして働く宿泊操業も実施しながら製品を供給した。
新しい第二生産棟では生産能力に加え、機能の増強も行っていく。
第二生産棟の開設によって、配線器具の生産能力は1.8倍まで高まり、従来の月産900万個から2030年度までに月産1600万個まで伸ばす予定だ。自動化および内製化を進め、自動化率は従来の42%から2025年度には90%になる。
金型は当初、日本やタイから調達していたが、工場内に放電加工機やマシニングセンタをそろえ、現在は65%を内製化。残りの金型に関しても、ほぼベトナム国内のローカルサプライヤーから調達している。最終的には80%をめどに金型の内製化を目指す。成型部品の金型は既に内製化できており、今後は金属部品の金型内製化に向けて、金型設計人材の育成に取り組む。
ベトナムは裾野産業の弱さが課題として指摘されることが多く、パナソニックエレクトリックワークスベトナム ECM工場長の内藤吉洋氏も「われわれはスイッチやコンセントに難燃性が高い特殊な材料を使用しているが、ベトナム国内で調達できないため、タイもしくは日本から輸入している」と話すが、「確実にベトナムの金型技術は高まっている。外部のサプライヤーの方が加工機を多くそろえているケースもあり、使い分けていく」とする。
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