ベトナム工場は2023年、課題を見える化して全員参加で改善していくため、トヨタ自動車にならった「大部屋」を導入。大部屋に置かれたWIP(Work In Progress、仕掛かりの意)ボードには、現場から挙がってきた課題が記されており、他部署も含めてそれに誰がいつまでに対応するかもまとめられている。
「日本人上司もいるため、以前は、現地メンバーの自発的な改善というのがなかなかできていなかった。こういった仕組みを取り入れることで、現地のメンバーから課題を発信し、それをみんなで解決できる有効なツールになっている」(内藤氏)
工場内に設けられた「安全道場」ではドリルの刃に手袋が巻き込まれる怖さを実感できる体感機などを備えており、新入社員たちにパナソニックの安全の考え方や服装などの注意点、過去の事故事例などを基にした教育を行っている。バイクで通勤する従業員も多いため、工場ではバイクの安全運転に関する講習も開いているという。また、年1回は“安全の日”として、工場の生産ラインを止めて、従業員全員で現場の安全について考えている。
「技術道場」では、自動組み立て機の設備保全について、ハードウェアとソフトウェアの観点から学ぶ。設備を構成しているモーターなどの構造や過去の改善事例などを学習する他、ハードまたはソフト面に意図的にバグが仕込まれた模擬設備を直す訓練などを通じてスキル向上を図る。「以前は、実際に設備が故障したら、復旧を優先するため“教える”ということがなかなかできなかった。現場で1人で任せられるようになるまで2年ぐらいかかっていたが、技術道場を作ってから、1年くらいで1人前になるようになった」(内藤氏)
パナソニックグループが行う毎年行う技能競技大会にもベトナムから出場しており、毎年のように入賞者を出している。「入社した彼らは“先生”となって次世代の人材の教育をしてくれている。工場内の技能継承の好循環が生まれている」(内藤氏)。第二生産棟の稼働を機に高まる生産能力を活用して、今後は「カンボジアやラオスなどベトナム近隣国への展開も考えていきたい」(パナソニック エレクトリックワークスベトナム 社長の坂部正司氏)とする。
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