ASEANのEVシフトはどう進む? 現地の最新状況を解説電動化(1/2 ページ)

三菱UFJリサーチ&コンサルティングのタイ法人MU Research and Consulting (Thailand)のコンサルタントである池内勇人氏が「ASEAN自動車市場 〜電動化の進展における主な論点〜」をテーマに行った講演を一部紹介する。

» 2024年11月11日 10時30分 公開
[MONOist]

 アイティメディアは、製造業向けの国内最大級のオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2024 夏」(2024年8月27日〜9月27日)を開催。本稿では三菱UFJリサーチ&コンサルティングのタイ法人MU Research and Consulting (Thailand)のコンサルタントである池内勇人氏が同イベントで「ASEAN自動車市場 〜電動化の進展における主な論点〜」をテーマに行った講演を一部紹介する。

 ASEAN諸国では2050〜2060年ごろをめどにカーボンニュートラルやネットゼロエミッションなどの目標が掲げられている。とりわけシンガポールやタイが取り組みを加速させている。

 また、タイやインドネシアなどは2030年にEV(電気自動車)導入による脱炭素目標を定めている。シンガポールは2040年までにガソリン車とディーゼル車の段階的廃止、インドネシアでは2050年までには9割以上がEVとするような目標がみられる。

 EVの普及目標を最も大きく設定しているのはマレーシアだが、補助金や恩典はシンガポール、タイなどの方が大きい。インドネシアはタイと比べて製造側に手厚い恩典を与えているものの、購入者にとってはメリットが二輪車限定となるなど手薄という評価がある。

 フィリピンは潤沢な予算を付与すると発表しているものの、具体的な政策は示していない。ベトナムは製造側に対する恩典の議論がようやく始まった段階だ。購入者には減税面で大きなメリットはあるが、メインの市場の二輪車にはまだ恩典が付与されないなど、ちぐはぐした印象があるという。インドは、連邦政府や州政府レベルで手厚い恩典を用意し、EVの推進に積極的に取り組んでいる。

タイでの電動車販売トレンド

 電動車の直近の販売トレンドをみると、継続して中国が圧倒的なシェアをもっており、次いで米国などとなる。ASEANの市場規模としては2023年で米国の10分の1程度にとどまっている。2024年の世界市場での販売が現状(2024年4〜6月)で260万〜270万台であることを加味すると、2022年の約1000万台と同程度に推移すると予測されている。

 2023年はASEANの中でEVブームを迎え、2022年の約2万7000台から16万台へと拡大した。特にタイやベトナムなどが伸長した。タイでは2030年にEVの販売を3割に増やす政策が掲げられているが、EVのシェアは2023年の12.9%から2024年は15.7%程度に落ち着くと予想される。ハイブリッド(HEV)を含めた電動車のシェアは25.4%から40.7%程度に伸びるとの見方だ。

 しかし、タイには電動化以外の問題もあり、消費者の購買意欲が戻らなければ目標に達しないとの懸念要素もささやかれている。販売台数は2024年4〜6月で約2.2万台。このペースで推移すれば10万台を突破する可能性はある。

 メーカー別の販売シェアは中国企業が大きく、価格帯は50万〜150万バーツ程度がボリュームゾーンとなっている。2023年までは15万バーツの補助金が出ていたこともあり、それを考慮すると1つ下のセグメントと同等に安くなるという状況だ。2024年は10万バーツほどの補助金があり、購入するにはまだ安く感じられるのが購入要因の1つになっているようだ。

 この他、タイでは当初の「EV3.0」政策は2023年10月で完遂した形となっているが、EV促進の方針を継続する現政権は「つなぎ政策」としてEV3.5を公表。購入者には引き続きEV購入に対し補助金を与えるが額面として25%ほど少なくなっている。

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