2024年8月の日系自動車メーカー8社の生産は、国内外で大きく減少した。中国市場での競争激化による苦戦に加えて、国内では台風の影響により稼働停止を余儀なくされた。その結果、乗用車メーカー8社の世界生産台数は全社が前年割れとなった。
2024年8月の日系自動車メーカー8社の生産は、国内外で大きく減少した。中国市場での競争激化による苦戦に加えて、国内では台風の影響により稼働停止を余儀なくされた。その結果、乗用車メーカー8社の世界生産台数は全社が前年割れとなった。国内生産も全社が前年割れ、海外生産はマツダを除く7社が前年同月を下回った。中国市場は回復の兆しを見せておらず、9月も台風の影響が残ることから、減産トレンドは今後も続くことが予想される。
8社合計の世界生産は、前年同月比9.8%減の185万4160台と4カ月連続で減少した。減少幅が1桁パーセントだったのはスズキ、マツダ、スバルの3社だけで、多くのメーカーが大幅マイナスとなった。このうち国内生産は、同15.5%減の51万3187台で、2カ月ぶりに減少した。ダイハツ工業をはじめとした認証不正による生産停止は稼働再開が進んでいるものの、8月下旬に九州から中部地方にかけて進んだ台風10号により、各社が稼働を停止したことが減産要因となった。
海外生産も振るわない。前年同月比7.4%減の134万973台と4カ月連続で減少した。地域別では競争激化が続く中国が同16.1%減と大幅減となり、7カ月連続のマイナス。低迷の出口が見えない状況だ。北米もトヨタ自動車のリコールによる生産停止や、日産自動車が在庫調整を実施したこともあり、同7.2%減と2カ月ぶりの前年割れだった。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 185,680 | 523,891 | 177,924 | 136,595 | 709,571 |
▲ 22.2 | ▲ 6.5 | ▲ 11.4 | ▲ 4.1 | ▲ 11.2 | |
ホンダ | 50,431 | 257,439 | 143,859 | 62,983 | 307,870 |
▲ 1.4 | ▲ 13.0 | ▲ 3.3 | ▲ 29.3 | ▲ 11.3 | |
スズキ | 71,979 | 182,906 | - | - | 254,885 |
▲ 5.0 | ▲ 0.9 | - | - | ▲ 2.1 | |
日産 | 41,568 | 194,448 | 107,974 | 42,495 | 236,016 |
▲ 13.4 | ▲ 15.9 | ▲ 13.2 | ▲ 20.3 | ▲ 15.5 | |
ダイハツ | 49,583 | 74,066 | - | - | 123,649 |
▲ 29.0 | ▲ 1.6 | - | - | ▲ 14.8 | |
マツダ | 46,865 | 39,327 | 29,746 | 3,262 | 86,192 |
▲ 14.0 | 18.8 | 43.4 | ▲ 58.5 | ▲ 1.6 | |
スバル | 37,058 | 32,282 | 32,282 | - | 69,340 |
0.0 | ▲ 8.2 | ▲ 8.2 | - | ▲ 4.0 | |
三菱自 | 30,023 | 36,614 | - | - | 66,637 |
▲ 8.0 | ▲ 12.4 | - | - | ▲ 10.5 | |
合計 | 513,187 | 1,340,973 | 491,785 | 245,335 | 1,854,160 |
▲ 15.5 | ▲ 7.4 | ▲ 7.2 | ▲ 16.1 | ▲ 9.8 | |
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、% ※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
メーカー別に見ると、トヨタの8月のグローバル生産台数は、前年同月比11.2%減の70万9571台と7カ月連続のマイナスだった。中でも落ち込みが目立ったのが国内生産で、同22.2%減の18万5680台と2カ月ぶりに減少した。
型式指定申請不正の「ヤリスクロス」「カローラフィールダー」「カローラアクシオ」の生産停止が響いた他、台風10号の影響により28日から国内全14工場28ラインの稼働を停止したことが要因だ。なお、ヤリスクロス、カローラフィールダー、カローラアクシオの3車種は台風影響で生産開始時期を延期したが、9月4日に3カ月ぶりに再開。ただ、認証不正はさまざまな影響をもたらしており、発売を予定する「クラウンエステート」やレクサス「GX」といった新型車の国内投入を延期している。
海外生産も伸び悩み、前年同月比6.5%減の52万3891台と6カ月連続で前年実績を下回った。地域別で見ると、中国は、依然として続く厳しい販売競争により同4.1%減となり、7カ月連続で減少。ただ、中国で生産する5社の中では唯一の1桁パーセント減にとどめた。
中国以外のアジアは、インドは「アーバンクルーザーハイランダー」や「イノーバハイクロス」の好調により前年同月比5.1%増と増加。フィリピンも同58.0%増と好調だったが、ローン審査の厳格化などにより主力拠点のタイ(同4.1%減)やインドネシア(同9.9%減)が低迷した結果、アジアトータルでは同2.2%減と7カ月連続で減少した。主要市場の北米では、稼働日が1日少なかったことや、運転席エアバッグのリコールにより「レクサスTX」と「グランドハイランダー」の生産を停止したこともあり、同11.4%減と2カ月ぶりに減少した。欧州も同2.4%減と2カ月ぶりのマイナスだった。
ホンダの8月のグローバル生産台数は、前年同月比11.3%減の30万7870台と2カ月ぶりにマイナスとなった。このうち海外生産は、同13.0%減の25万7439台と2カ月ぶりに減少した。北米は米国の稼働日減少により同3.3%減と2カ月ぶりのマイナス。中国もEV市場の競争激化により同29.3%減と低迷し、2カ月ぶりに前年実績を下回った。アジアトータルでも同25.1%減と4カ月連続で減少した。
国内生産は、前年同月比1.4%減の5万431台と微減で、2カ月ぶりに前年実績を下回った。ただ、9月の国内販売では、車名別販売ランキングトップの「N-BOX」が前年同月から2割以上も伸長した他、「フリード」(同53.2%増)や「フィット」(同42.9%増)など主力モデルも台数を伸ばした。なお、四輪車の台風10号による影響は、9月2日に鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の生産ペースを落とした程度だった。
スズキの8月のグローバル生産は、前年同月比2.1%減の25万4885台と3カ月連続で減少した。このうち海外生産は同0.9%減の18万2906台と3カ月連続のマイナス。世界生産の6割を占めるインドはイベントシーズンに向けた在庫の積み増しや新型車「フロンクス」の輸出増加などで同2.1%増と3カ月ぶりに増加。ただ、前年の増産の反動減が表れたハンガリーなど、インド以外の海外生産が同27.0%減と低迷しており18カ月連続で減少した。
国内生産は、前年同月比5.0%減の7万1979台と7カ月ぶりにマイナスへ転じた。2023年11月以降に新型を投入した「スペーシア」や「スイフト」が好調だったものの、欧州向け「イグニス」の生産終了などがマイナス要因となった。
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