「やばい」「えぐい」しか言わないのと地続きです。
言葉の乱れは心の乱れ、なんて言われたらどう思いますか。小中学校の標語みたいですよね。生活指導の先生が言うかもしれません。
先日のNHKでそんな感じの導入で始まった番組がありました。何でも「やばい」「えぐい」で表現して自分の感情が分からなくなると、困りごとや悩みも説明できず、孤立しやすく危険であること。自分の感情も分からない不安定さに目をつけて、闇バイトに引き込む輩がいること。自分の感情を説明できることが、トラブル抑止につながる例があること……などを紹介する番組です。
最後まで見ると、簡単で便利な言葉で片付ける危うさはどこにでも潜んでいるような気がして、考えさせられました。
例えば、メディアは外資系企業の日本参入を「黒船」と表現することがあります。その由来は言うまでもなく1853〜1854年に日本にやってきた米国の東インド艦隊司令長官兼米使提督であるマシュー・ペリーの「黒船来航」のことです。その結果、1854年3月には米国の船への支援や最恵国待遇を求める日米和親条約が締結され、日本の鎖国政策が終わりました。
外資系企業が日本に来ることを「日本参入」と言わずに、「黒船」と表現するとき、ポジティブではないニュアンスが含まれていることが多分にあります。日本の既存のプレイヤーを脅かす、日本市場や既存のビジネスにルール変更を迫る、日系企業よりも先進的で優れたプレイヤーがやってくる……そんな印象が付与されています。また、友好的ではないやつらが日本に踏み込んできたとか、日本の市場や企業が外資に比べて出遅れていて劣っているという意味合いも持たせることができますね。
黒船という言葉で片付けると、日本に参入した外資系企業のことだけでなく、待ち受ける日系企業のことも見誤る可能性があります。
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