電動キックボードの高速道路進入を防ぐ、Limeがジオフェンシング導入モビリティサービス(1/2 ページ)

電動モビリティのシェアリングサービスを手掛けるLimeは安全やマナー向上の取り組みを発表した。

» 2025年04月14日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 電動モビリティのシェアリングサービスを手掛けるLimeは2025年4月11日、安全やマナー向上の取り組みを発表した。安全面では、高速道路への誤進入を防ぐジオフェンシング制御を導入する。首都高速道路の出入り口などで順次整備し、渋谷センター街などへの適用も目指す。マナー向上に関してはポート(駐輪場)以外での返却を防ぐビーコン制御を導入する。ビーコンは2025年6月までに全ポートに設置し、今後新設するポートにも置く。

 電動キックボードなどのシェアリングサービスはユーザーのマナーの低さが耳目を集めがちだ。啓発活動とテクノロジーの両面でユーザーのルール違反や安全ではない行動を減らしていく。

写真左からLimeの井上祐輔氏とテリー・サイ氏。後ろにあるのは溶接工場の建屋を再利用した拠点。海外から輸送されてきた車両を組み立てる。駆動用バッテリーの充電も行う。バッテリースワップステーションが普及すれば、バッテリーの充電作業は市中で行われる[クリックで拡大]

日本参入直後から導入していたジオフェンシング制御

 ジオフェンシング制御は、Limeが日本に参入した直後の2024年9月から導入してきた。明治神宮、代々木公園、皇居周辺、新宿御苑への誤進入対策として運用実績がある。Limeのポートがある沖縄県那覇市のショッピングモール「パレットくもじ」にも適用している。これらの場所は自転車やバイク、その他モビリティの乗り入れが禁止されている場合があるためだ。

 Limeはジオフェンシング制御において、走行可能なサービスエリア、走行禁止エリア、自動でスピードを落とす減速エリアを設けている。走行禁止エリアに入ると1秒ほどで車両本体から音が鳴る。急停止にならない範囲で出力が落ちてゼロになり、走行できなくなる。走行禁止エリアに進入したユーザーは、車両を押してサービスエリアに戻る必要がある。

ジオフェンシング制御によって走行禁止エリアで停止する様子[クリックで再生]

 2024年12月、他社のシェアリングサービスで電動キックボードに乗る人が首都高に立ち入り、話題になった。これをきっかけにLimeは警察や管理者の首都高速道路に相談しながら対策の検討を始め、2025年2月上旬には渋谷や池袋の首都高料金所付近にジオフェンシング制御を導入した。なお、2025年3月末にはLimeユーザーが首都高の新宿料金所から誤進入する事案が発生(Limeは監視カメラの映像などから故意の侵入ではないと判断した)。これを受けて新宿料金所にも即日ジオフェンシング制御を適用した。

ジオフェンシング制御の今後の広がり

 ジオフェンシング制御は今後も進化させる。導入予定の対象の1つが、時間帯によって車両の進入や走行が禁止されている渋谷センター街だ。精度を検証しつつ、自治体や渋谷センター街の事業者と協調しながら進める。

 きっかけはスクランブル交差点で歩道や歩行者の間を通り抜ける電動キックボードが危険視されていることだという。「スクランブル交差点を通る電動キックボードをどうにかできないかという相談があった。スクランブル交差点の構造では、減速/停止するジオフェンシング制御で追突リスクが高まるため適用は難しいが、渋谷センター街でも同様の問題が起きていると聞いた。渋谷センター街であればジオフェンシング制御を適用できそうなので、早期に導入したい」(Lime 日本政府渉外責任者の井上祐輔氏)

 首都高の出入り口へのジオフェンシング制御適用も進めるが、隣接する一般道との分離が課題になる。「全ての料金所に走行禁止エリアを設けて停止させたい。そもそも料金所を越えて進入することがないようにするため、料金所の手前のスペースを走行禁止エリアにする。もっと手前で制限をかけるのは、走行可能なサービスエリアとの識別が難しくなる。高速道路に進入しないユーザーまで減速させることになる」(井上氏)

海外ではかなり細かく走行禁止エリアを設定した地域もある。赤い線で囲まれているのが走行禁止エリア[クリックで拡大]
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