エコキュート製造の三菱電機 群馬工場 翻訳サイネージ含む自動化の最前線メイドインジャパンの現場力(1/2 ページ)

カーボンニュートラルで注目を集める「エコキュート」だが、新たな価値提案を重ねながらエコキュート製品で着実な成長を遂げているのが三菱電機だ。その中心拠点である三菱電機 群馬製作所のモノづくりの強みについて紹介する。

» 2025年04月25日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 世界的なカーボンニュートラル実現への機運が高まる中、省エネ性能の高い自然冷媒ヒートポンプ給湯機「エコキュート」の需要が国内でも堅調に伸びている。三菱電機は2025年4月17日に、国内向けの給湯器の中心製造拠点である群馬工場(群馬県太田市)を報道陣に公開し、エコキュート製品のモノづくりの強みについて紹介した。

累計生産台数260万台を突破したエコキュート

 三菱電機の群馬工場は1959年に家庭電器工場として操業を開始した。敷地面積は14万6133m2、建物面積は6万4605m2で、従業員数は約750人だという。現在は電気給湯器専門工場だが、給湯製品は1964年に深夜電力利用電気温水器を発売して以来、ラインアップを増やし、2001年にヒートポンプ式給湯器を発売した。2025年中には給湯器の累計生産台数700万台を達成見込みだという。また、エコキュートの累計生産台数も260万台に到達したという。

photo 三菱電機 群馬工場[クリックで拡大]

 エコキュートはCO2冷媒の循環により大気中の熱を水に加えてお湯にする。室外に設置するヒートポンプユニットにより、熱交換で空気の熱をくみ上げ、圧縮して高温化することで、お湯を作り出す。作り出したお湯は貯湯ユニットにためられ、家庭内の必要な場所に供給される。

photo エコキュートの基本的な仕組み[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 三菱電機ではエコキュートメーカーとして、給湯器の高効率化に加え、顧客ニーズに応える新しい機能を次々に付け加えて成長してきた。現在、エコキュート製品で強化しているポイントが「高効率」「清潔」「災害時に備える」の3つだ。

 高効率化では、断熱性の高い真空断熱材とウレタンを組み合わせた「サーモジャケットタンク」により高い保温性能を確保する。さらにヒートポンプユニットには、三菱電機独自のコイルを高密度に集積した独自モーター「ポキポキモーター」を採用。さらに、4本の配管をツイスト状に巻きあげた独自の冷媒配管で効率よく熱交換を行えるようにしている。これらの工夫により、2025年5月に発売する新製品ではトップランナー制度における2025年度の省エネ基準を全機種で達成している。

photophoto 真空断熱材とウレタンを組み合わせたサーモジャケットタンク(左)とポキポキモーターと冷媒配管などの基礎技術(右)[クリックで拡大]

 清潔関連機能については、マイクロバブルを用いて洗浄剤を使わずに配管を自動洗浄する「バブルおそうじ」機能を搭載。風呂の排水を自動で検知し、その排水のお湯にマイクロバブルを発生させて配管をそうじする。さらに、湯はり後に菌の増殖を抑えるために深紫外線で除菌する「キラリコキープ PLUS」などの機能も用意する。

photophoto 「バブルでおそうじ」のデモの様子。左側の湯舟で排水しているのを検知すると左側の機器部でマイクロバブルを作り、中央の配管を掃除する(左)。マイクロバブルを使用した場合とそうでない場合とでは熱交換器の汚れも大きく異なる。バブルおそうじなしの場合は黒ずんだ皮脂汚れが目立つのに対し、バブルおそうじありの場合はそういう汚れがほとんどない(右)[クリックで拡大]

 災害時に備える機能としては、エコキュートの貯水機能を生かし、災害時に生活用水をこのタンクから取水できる機能「パカッとハンドル」を搭載している。脚部カバーを外さなくてもハンドルを回すだけで簡単に吐水口から水を出せる。

photo 「パカッとハンドル」で取水する様子[クリックで拡大]

 その他、遠隔操作機能の拡充や、昼間余剰電力活用の強化などを進めている。三菱電機 静岡製作所 ATW・給湯開発統轄部 部長の柳本圭氏は「給湯器の中で電気の割合はまだまだ小さく、ガスとの置き換えを進めていくことがポイントだ。エコキュートの強みとして貯湯タンクがあるので、レジリエンス性などを訴えていく」と述べる。

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