本連載では、工作機械史上最大の発明といわれるCNCの歴史をひもとくことで、今後のCNCと工作機械の発展の方向性を考察する。連載第1回目の今回は、まずCNCとは何かについて改めて説明する。
さまざまな素材に切削、研削などの加工を行い、目的の形状に仕上げる工作機械。世の中の全ての機械や部品は工作機械から生み出されており、いわば機械を作る機械である。その工作機械の自動化や精度の維持において重要な役割を果たしているのが、CNC(コンピュータ数値制御)装置だ。
CNCは工作機械史上最大の発明といわれている。
それまでの工作機械は、人が操作して機械加工を行うための道具であり、使いこなすためには時間を掛けてその技術を習得する必要があった。
この自動化を実現したのがCNCである。熟練者の加工技術に基づき加工プログラムを作成することで、再現性のある機械加工を実現したり、工作機械の連続運転を実現したりすることが可能となった。
その一方で、近年のCNCは一層の高度化が進み、その内部で何が行われているのかが分からずブラックボックス化されているといわれている。
確かに、最新のCNCにおける技術的な仕様は、その開発メーカーの競争力の源泉でもあり、その詳細が公開されていないのは事実である。しかし、CNCがどのように発展をしてきたか、その過程をひもとくことにより、CNCの内部で何が起こっているのかを理解することができるかもしれない。そう考えてCNCの発展の歴史を調査し、本稿にて紹介することにした。
⇒連載「CNC発展の歴史からひもとく工作機械の制御技術」のバックナンバーはこちら
どのような技術が積み上げられて最新のCNCが構成されてきたのか、それを明らかにすることで今後のCNCと工作機械の発展に寄与することができればと思う。
CNCがどのように発展してきたか、その70年近くにわたる年表を図1に示す。数値制御により工作機械を自動で動かす装置が国内で初めて登場した1956年から現在に至るまでを、3つの時期に分けて記載をしている。
1956年〜1974年を第1期とし、現在のCNCにもつながる基本的な機能が備わりCNCが誕生した時代と位置付けている。
続いて1974年〜1997年を第2期とし、CNCを搭載した工作機械の比率が高まりCNCが工作機械の標準になった時代として区切っている。
最後に1997年から現在に至るまでを第3期とし、新しいPCベース世代のCNCの登場などによりCNCの自由化が進行している時代としている。
図1の上段はCNCアーキテクチャの発展を表しており、CNCの設計構造がどのように変化してきたかを示している。図の下段はCNCの機能の発展を表しており、現在のCNCにおける基本機能がどのように進化してきたかを示している。
この年表を詳細に解説していく形で、本稿ではCNC発展の歴史を紹介していきたい。なお、70年近くに渡るCNCの歴史をこのような形で3つの期間に分けたのは筆者独自の観点である。これについてはさまざまなな見解があると思われるが、長い歴史をなるべく分かりやすく多くの方々に理解していただくための1つの方法と捉えていただけたらと思う。
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