連載第1回目の今回は歴史を解説していく前に、CNCとは何かということについて少し時間を掛けて説明しておきたい。
CNCとはComputerized Numerical Controlを略した表現であり、コンピュータ数値制御のことである。工作機械を用いた機械加工において、その工具の移動経路や速度をコンピュータにより数値情報で指令を行うことを示している。
現在の一般的なCNC装置を図2に示す。CNCとよく似た言葉にNC(Numerical Control)がある。初期の数値制御においてはトランジスタなどの素子を用いて演算処理がなされており、こういったハードワイヤード回路を用いた数値制御がNCと呼ばれている。
これが後に、マイクロプロセッサなどを用いて演算処理を行うことが主流となり、こういったコンピュータを用いた数値制御をCNCというのが一般的である。本稿でもこれに沿って記述するが、実際にはNCとCNCは混同して使われることも多い。最新のCNCを搭載した工作機械もNC機械と呼ばれることがあり、あまり厳密には区別されていないのが実情である。
NCやCNCが登場する以前の工作機械は、もともとは手動で機械加工を行うものであった。
図3に現在も生産されている普通旋盤を示す。手前のハンドルを操作することで切削工具を位置決めし、機械加工を行うものである。この軸移動を数値制御により行うのがNC旋盤やNCフライス盤といった工作機械である。
さらに、このNCフライス盤を発展させたのがマシニングセンタである。切削工具であるエンドミルを自動交換する機能を備えることで長時間の連続運転を可能とした。CNCは工具の移動指令を行うだけでなく、工具の自動交換の指令など工作機械における全ての制御を担っている。
続いて、現在のCNCにおける基本構成について説明する。図4がその構成図である。現在のCNCはさまざまな機能を持っているが、その根幹となるのはデータ保持部、数値演算部、サーボ制御部の3つである。
まず、CNCへの入力となる加工プログラムはデータ保持部が持っている。この加工プログラムに基づき、工具の移動経路や速度を演算するのが数値演算部の役割である。こうして生成された指令値をサーボ制御部が受け取り、モータを動作させるのである。CNCはこれらに加えて、センサーや操作ボタンといった機器との接続を行うPLC制御部を持っている。
PLCとはProgrammable Logic Controllerのことで、変更可能なプログラムによって機器を制御している。また、工作機械のオペレーターが確認する画面などに関する表示制御部、外部のPCなどとデータのやりとりを行う通信機能部もCNCには備わっている。さらに、近年のCNCにおいては、オペレーターがより効率的で安全に工作機械を使用できるようにソフトウェアが搭載されており、これをソフトウェア機能部として記載している。
ソフトウェア機能部をどのように構成するかはCNCの設計構造に依存しており、独立して存在していることもあれば、数値演算部や表示制御部などに使われているコンピュータを用いていることもある。そして、これらの各部が高速で内部通信を行うことにより、CNC全体の機能を実現しているのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.