日立製作所はAIエージェントと「NVIDIA Omniverse」を活用し、安全手順の確認や危険箇所のシミュレーションが可能な「現場安全高度化ソリューション」を販売する。
日立製作所は2025年7月8日、同社のAI(人工知能)エージェントと「NVIDIA Omniverse」を活用し、安全手順の確認や危険箇所のシミュレーションが可能な「現場安全高度化ソリューション」を、同日から販売すると発表した。輸送や電力、ガス、建設、鉄道などの危険を伴う作業現場において、フロントラインワーカーの安全確保を図る。
現場安全高度化ソリューションでは、日立製作所のOT(制御技術)活用ノウハウで熟練者の安全基準を学習したAIエージェントが、NVIDIA Omniverseのソフトウェアライブラリでシミュレーションされたデジタルツイン上で、作業員に対して作業手順や注意点を視覚的に提示する。
具体的には、ユーザーが蓄積してきた現場の安全事例を学習させた多様なAIエージェント群を構築、提供するとともに、これまで日立製作所が培ってきた要素技術を結集しユーザーの作業現場を精緻に再現したデジタルツインを構築する。
作業者の経験レベルや作業内容、現場環境に応じて最適化された各AIエージェントが、デジタルツイン上で個々の状況に合わせた作業手順や注意点を視覚的に分かりやすく提示することで、従来の紙や口頭による伝達で懸念される伝達漏れや認識のずれの発生リスクを大幅に削減し、労働災害の撲滅を目指す。
現場作業では、限られた時間内での情報共有や設備騒音による伝達の難しさなど、コミュニケーションに課題があった。従来は熟練作業者の経験と判断力で補ってきたが、熟練作業者の減少により従来の伝達方法では伝達ミスや認識のずれが発生し、労働災害につながる懸念が高まっている。
現場安全高度化ソリューションでは、日立グループにおける数百のOT事例から得たナレッジ抽出手法で、現場構造や作業特性、熟練作業者の判断基準や暗黙知を学習したAIエージェント群を構築。このAIエージェント群は「Frontline Coordinator - Naivy」の心理的負担軽減技術などを活用し、各作業者の経験レベルや職種、作業内容に応じて適切に構成される。NVIDIA Omniverseの高度で物理的に正確なシミュレーション機能を活用したデジタルツイン上で、作業者に視覚的かつ分かりやすく作業手順や注意点を提示する。
また、「リスクマネジメント高度化ソリューション」との連携により、日立グループが蓄積してきた安全管理ナレッジを各AIエージェントに取り込み、デジタルツイン上での危険シナリオシミュレーションを実施。これまで熟練作業者の個人的な経験や直感に依存していたリスクアセスメントを、AIエージェント群による統一された基準で実施することで、部署や個人による安全基準のばらつきを解消し、現場特有のリスクや注意点を誰もが分かりやすく理解できる環境を整備する。
日立プラントコンストラクション 柏事業所などにおいて、2026年3月からの本番業務への段階的導入を見据え、導入に向けた検討および準備を進めている。新人作業員向けの教育プログラムや現場作業のシミュレーション、事故防止を目的とした定例ミーティングなどでの活用を想定している。
生成AIを活用した業務効率化やサービスの高度化など経営改革を推進するユーザーを伴走型で支援する「生成AI活用プロフェッショナルサービスpowered by Lumada」の一環として提供される。導入に当たって、同社の「GenAI Professional」が構築、運用を伴走支援し、NVIDIAとの連携で培われた知見を基に、現場定着までを一貫してサポートする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.