日立製作所と日立プラントサービスは、共同開発した次世代AI(人工知能)エージェント「Frontline Coordinator - Naivy」の概要を説明した。
日立製作所と日立プラントサービスは2025年7月3日、東京都内で記者会見を開き、両社で共同開発した次世代AI(人工知能)エージェント「Frontline Coordinator - Naivy」(以下、Naivy)の概要を説明した。Naivy(ナイビー)は、現場作業における非熟練者の心理的負荷軽減と作業効率化を目的としている。
少子高齢化が進み、施設管理現場の熟練者不足が深刻化している。人手が足りない中で、多忙な熟練者は非熟練者の教育に十分な時間を割くことができず、非熟練者が現場で慣れない業務に対応する際に、心理的負担を抱えてしまうケースが増加しているという。そのため、熟練者の技能を非熟練者に共有する仕組みづくりが求められている。そこで、日立製作所と日立プラントサービスはNaivyを開発した。
Naivyは、メタバース空間で蓄積、生成される情報と、現場でリアルタイムに発生する事象を効果的に統合、調整し、必要な情報を適切なタイミングで分かりやすく提供する。
具体的には、360度カメラなどを用いて実際の工場の環境をメタバース内に構築。現場のワークフローや施設情報をAIで解析し、それらをメタバース上の場所などとひも付けて蓄積する。そして、このメタバース空間上のナレッジをベースにAIエージェントが回答する。
例えば空調管理におけるトラブルでは、アラートが鳴ったことを現場の作業者がPCのNaivyに入力すると、Naivyは装置名や部屋名などの内容から対象機器と位置を特定し、関連するワークフローを抜き出して操作方法を提示する。現地までの正確な経路や、対象バルブを30度回すといった情報まで提案可能だ。情報が足りなかったり、複数の選択肢が考えられたりする場合は、必要な追加情報をNaivyが提示する。
Naivyにはビデオ通話機能もあり、熟練者は現場の作業者がタブレット端末で撮影した映像を通して実際の状況を遠隔で確認できる。
日立製作所 研究開発グループ 先端AIイノベーションセンタ ビジョンインテリジェンス研究部 部長の吉永智明氏は「非熟練者は『Naivyがこういう風に言っている』という内容を熟練者と会話した上で、現場に向かって対応する。非熟練者がAIエージェントの情報だけを見て作業を進めるのではなく、現段階ではAIエージェントが出した情報を熟練者と一緒に確認する必要がある。ただ、どんな会話をしたかや、どのような作業をしたかなど、作業のログも蓄積されるため、使えば使うほど現場でのノウハウがたまり、Naivyが対応できる、つまり熟練者化できる範囲が広がっていく」と語る。
Naivyは人、AI、機械やロボットなどを統合的に働かせるための“調整役(フロントラインコーディネーター)”として位置付けられている。Naivyという言葉も、NavigationとAIを組み合わせた造語で「現場をナビゲートし、支援するAI」を意味している。
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