Naivy開発の主な狙いは、非熟練者の心理的負担の軽減と、物理的制約の克服だ。
人手が不足し、教育体制も十分ではない中で、非熟練者は“何かを見落としてしまうのではないか”という心理的な不安や、“やり方が分からないまま作業をする”というストレスを現場で抱えている。ただ、熟練者に確認したくても、忙しい熟練者を前にして質問をためらったり、作業自体に慣れていないため要点をうまく伝えられなかったりするケースも多い。
「そこにAIが入ることで、AIなら気軽にコミュニケーションが取れるだけでなく、AIが内容を整理してくれることで、熟練者にも分かりやすく要点だけを変換してレポートとして提示できる。これにより、熟練者も非熟練者も、コミュニケーションが非常にスムーズになる」(吉永氏)
また、これまではOJT(On the Job Training)を行うために、熟練者と非熟練者が同じ現場で働く必要があった。それに対して、Naivyではメタバースという同じ空間に入ることで、熟練者が同じ現場にいなくても、遠隔で複数の拠点の非熟練者を支援できる。
日立プラントサービスが施設管理を行うルネサスエレクトロニクスの工場で行った1週間の検証では、Naivyを使うことで発生したトラブルに対して適切なワークフローを選択するまでの時間が14分から10分に短縮され、28%の業務遂行能力向上効果を確認した。また、「今までうまく聞けなかったことが簡単に聞けて助かる」「聞きたいときに質問ができて心強い」といった心理的負荷軽減効果も見られたという。
日立製作所は2025〜2027年度までの中期経営計画「Inspire 2027」で、同社のドメインナレッジで強化したAIで社会インフラを強化する「Lumada 3.0」を掲げている。「トラブルシューティングだけでなく、日々の点検や安全管理といった業務でも活用できるように考えている。まさにドメインナレッジからAIが進化して現場を支援していくというLumada 3.0を体現できるシステムにNaivyを今後成長させていきたい」(吉永氏)。
Naivyのナレッジ管理機能や一部のアプリケーションは日立ソリューションズが2025年内に製品化予定となっている。また、日立製作所が2025年7月17日に「Hitachi Social Innovation Forum 2025 JAPAN, OSAKA」でもNaivyを展示する。
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