日立が2025年度からの新体制を発表、CIセクタートップは阿部氏からコッホ氏へ製造マネジメントニュース

日立製作所は2025年1月31日、同年4月1日付で行う組織変更と執行役などの役員人事について発表した。

» 2025年02月03日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日立製作所(以下、日立)は2025年1月31日、同年4月1日付で行う組織変更と執行役などの役員人事について発表した。同社の新たな執行役社長兼CEOに就任する徳永(正しい漢字は右側の心の上側に「一」が入る)俊昭氏の下で推進する2025年度からの次期中期経営計画において、デジタルをコアにした真の「One Hitachi」への変革を実現するための事業体制強化が狙い。

 組織変更では、これまでDSS(デジタルシステム&サービス)、GEM(グリーンエナジー&モビリティ)、CI(コネクティブインダストリーズ)の3セクター体制から、GEMセクターを構成するエナジー事業とモビリティ事業を2つのセクターに分割し、4セクター体制に変更する。また、ITソリューションを展開するDSSセクターの位置付けについて、OT(制御技術)とプロダクトを手掛けるCIセクター、エナジーセクター、モビリティセクターのデジタル化を加速してOne Hitachiの価値を創出する役割を明確化する。

日立の新たな事業体制 日立の新たな事業体制[クリックで拡大] 出所:日立

 このDSSセクターのトップであるDSS統括本部長には、現任の徳永氏が新社長に昇格するのに併せて、現在CIセクタートップのCI事業統括本部長を務める阿部淳氏が就任する。阿部氏は、OTとプロダクトを手掛けるCIセクタートップを現任しているだけでなく、これまでに全社デジタル事業の基盤強化なども担当するなど、IT、OT、プロダクト全ての事業を率いた経験を有している。同氏が日立グループ全体のデジタル事業をけん引することで、DSSセクターとOT、プロダクト領域の連携をより強化し、各事業におけるデジタル化をさらに加速させたい考えだ。

日立のCIセクタートップに就任するブリス・コッホ氏 日立のCIセクタートップに就任するブリス・コッホ氏。正式な役職は、代表執行役 執行役副社長 社長補佐(アーバンシステム事業、インダストリアルプロダクツ&サービス事業、インダストリアルAI 事業担当)、コネクティブインダストリーズ事業責任者兼コネクティブインダストリーズ事業統括本部長兼インダストリアルAI ビジネスユニットCEO[クリックで拡大] 出所:日立

 新たなCI事業統括本部長には、阿部氏と同じ代表執行役 執行役副社長で社長補佐(経営戦略、地域戦略、投資戦略、リスクマネジメント、輸出管理、コスト構造改革、情報セキュリティ戦略担当)、CSO兼戦略企画本部長兼地域戦略責任者兼CRMO兼投融資審査統括本部長/日立ヨーロッパ 取締役会長のブリス・コッホ氏が就任する。

 コッホ氏は1994年にABBグループに入社してから2017年5月に日立に転籍し、2018年4月に日立オートモティブシステムズの代表取締役社長執行役員&CEOに就任。同社の日立Astemoへの体制変更後も2023年6月まで代表取締役 プレジデント&CEOを務めていた。コッホ氏は、ABBグループなどでの豊富なグローバル事業運営の経験と、日立グループにおける事業推進やCSOとしての全社経営戦略策定の経験を生かして、CIセクターのグローバルな構造改革とデジタル化を強力に推進するという。

 また、CIセクターは、事業ポートフォリオのシンプル化と市場での競争力をさらに向上させるため、アーバンシステムBU(ビジネスユニット)、インダストリアルプロダクツ&サービスBU、インダストリアルAI BUの3つのBUに集約し、経営のスピードを上げ、事業間のシナジー創出を加速していく。

 アーバンシステムBUは、アーバン(都市)分野におけるプロダクトに強みを持つビルシステムBUと日立グローバルソリューションズ(日立GLS)から構成される。スマートビルソリューションに日立GLSの「exiida遠隔監視・予兆診断ソリューション」を組み合わせて顧客に提供するなどの連携を進め、両社の事業拠点やロジスティクス、エンジニアなどのリソースを相互活用するなどの業務効率化に向けた取り組みも検討、推進する。

 インダストリアルプロダクツ&サービスBUは、産業分野の顧客向けに大型のプロダクトを提供する事業で構成。産業分野における顧客フットプリントやプロダクト開発、サービスにおける知見を相互に活用し、プロダクトを核にデジタルを活用したサービス事業のさらなる成長を目指す。

 インダストリアルAI BUは、ロボティクスSI分野、半導体製造装置/ヘルスケア分野、水・環境分野における各種プロダクト・サービスの開発、提供を行う事業で構成される。生成AIを活用した製造プロセスの効率化やサービスの高度化を行い、グローバルで成長を加速させる。なお、ロボティクスSI分野を手掛けてきたインダストリアルデジタルBUは再編され、機能の一部をDSSセクター傘下の社会BUに移管して同セクターと一体運営とすることで、インダストリー領域のデジタル化を加速する。

 さらに、既存事業を推進する4セクターに加えて、新たな成長機会を獲得するため、全社のリソースを結集して新たな社会イノベーション事業(SIB)を創生する戦略SIB BUをCEO直下に新設する。同BUでは、生成AIの活用拡大により急速に需要が拡大するデータセンターや、CIセクターが手掛けるOTやプロダクトとの関わりが深いヘルスケア/バッテリーといった戦略テーマをCEOがトップダウンで決定し、新たな成長機会の獲得に向けて、グローバルな事業の創生を進める。

 これらの組織変更に合わせた執行役人事は以下の通り。エナジーセクタートップのエナジー事業責任者には、執行役専務でパワーグリッドBU CEO/日立エナジー CEOのアンドレアス・シーレンベック氏が、モビリティセクタートップのモビリティ事業責任者には、執行役専務で鉄道BU CEO/日立レール ダイレクターのジュゼッペ・マリノ氏が就任する。

 CIセクターでは、執行役常務でビルシステムBU CEO兼コネクティブインダストリーズ事業統括本部副統括本部長/日立ビルシステム 代表取締役 取締役社長の網谷憲晴氏が執行役専務に昇格し、CIセクターのCOO兼アーバンシステムBUのCEOに就任する。インダストリアルプロダクツ&サービスBUのCEOは、執行役常務で水・環境BU CEOの中津英司氏が就任。インダストリアルAI BUのCEOは、CIセクタートップのコッホ氏が兼任する。

 戦略SIB BUのCEOには、執行役常務でデジタルエンジニアリングBU CEO/日立デジタル CEO/日立アメリカ 取締役社長兼CEOを務め、全社デジタル戦略をグローバルに実行してきた谷口潤氏が執行役専務に昇格した上で就任する。

 なお、CIセクター関連では傘下子会社の2025年4月1日付の新社長人事が決定した。日立産機システムの取締役社長兼CEOには、現日立グローバルエアパワー CEO兼取締役(非常勤)のジョン・ランドール氏が、日立インダストリアルプロダクツの取締役社長には、現常務取締役 電機システム事業部長の奥慎太郎氏が新たに就任する。なお、現職である日立産機システム 取締役社長兼CEOの竹内康浩氏は日立 執行役常務/日立アメリカ 取締役社長兼CEOに就任し、日立インダストリアルプロダクツ 取締役社長の小林圭三氏は日立嘱託となる予定。

 また、日立 執行役常務 CI事業統括本部副統括本部長/日立ハイテク 代表取締役取締役社長の飯泉孝氏、執行役常務 インダストリアルデジタルBU CEOの森田和信氏は、現職からの退任のみが発表されている。

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